「雛子、緊急事態発生⁉」
「どした?」
伊予美柑。
かなり美人で、ちょっと天然が入っている自慢の親友。
この子が慌てる原因は、だいたい一つというか一人しかいない。
「鳴雄サマに好きな人がデキちゃったかも……」
「――マジ?」
「マジ」
それが本当なら一大事だぞ?
例えるなら校長のテカリんヘッドが次の日、密林ヘッドに変わるくらい凄いことなんだが……。
「朝見ちゃったの……」
美柑が言うには、朝、鳴雄の靴箱にラブレターが入っていて、その場で読んで「フフッ」と笑ったそうだ。
「いや、それだけじゃ、わかんなくない。アイツ結構『フフッ』って言うよね?」
「それだけじゃないの、ほら?」
教室の前の黒板に自画像を落書きしている鳴雄。
並の人間ならこの痛々しい行為を続けるメンタルなぞ持ち合わせちゃいないが、彼のメンタルは異次元の領域。「ンフフン、フン!」と鼻歌混じりで、美術部顔負けの大作を描き切っていた。
今日はやけに機嫌がいいのか。



