ふうやれやれと一息ついたその時。
「ピンポーン!」
あれ?
美柑、鍵忘れて出て行っちゃった?
「どうしたの美柑……」
――ガシャ。
ドアを掴まれて無理やり扉を開けられた。
「騒いだら刺すから」
中に無理やり入ってきた男が、ジャケットの下に隠し持っていた包丁を瀬十花の首すじに当てて、廊下の壁まで押しやった。
配達員の格好をした男。
たしかさっきパスタのデリバリーをした男じゃ。
フルフェイスのヘルメットを被ったままだが、呼吸が荒くシールド部分が曇っている。
「じゃーん、俺だよぉぉおお?」
この男は……。
シールドを上げたのでようやく顔を拝んだが、ここ一カ月ほど瀬十花のまわりでストーカー行為を繰り返していた男だった。
元彼でもなければ知り合いでもない。
約一か月前、道を訊かれたから教えただけ。たったそれだけで、帰り道に待ち伏せされたり、大学やアルバイト先のケーキ店に電話をかけてきたりとストーカー行為を繰り返すようになった。
幸い、家バレはしていなかったから、3日前に警察に相談した後、大学やケーキ店に相談して1週間ほど家に閉じこもっているつもりだった。



