「それより、アイツまだ来てないな」
「そういえば●●サマ。登校中に交差点で困ってたお爺ちゃんの荷物を持ってあげて一緒にどっか行ったよ」
「人助けで遅刻するとか、やっぱスゲーなアイツ」
「うん、当たり前の理想を当たり前にするのって、ホント凄いと思う」
誰の話だ?
視線は前の黒板に向けたまま、耳は思い切り隣に傾ける。
誰かが人助けしたとか何とか話している。
そういや、窓側いちばん奥の俺の一コ前の席が空いているが、この席のヤツのことだろうか?
「・・・まえ」
「――ん?」
話しかけられた?
でも、声の方向は窓の外。
って、まさかそんなわけが……ぬぉぉぉおおおお~~~~~~っ⁉
「そこを退きたまえ、我が教室に入れないではないか?」
窓の下から顔を覗かせている男。
いやいやいや、ここ3階だから⁉
いったいどうなってる?
訳がわからないまま、窓の縁を涼し気な顔で掴んでいる男の圧に怯んで席を外した。
謎の男は回転して、教室の中に着地すると俺の前の席へと座った。



