可愛くなりたい!

「もしかして、口紅選んでたの?」

「あっ、うん。でも何色が似合うかわからなくて……」

選んでいたわけじゃないけど、嘘を吐いてしまった。笑みを浮かべていた渉くんは、私の言葉で真剣な表情になった。私をジッと見つめる。ドキドキと胸が苦しい。

「この色、歌川さんに似合うと思うな」

渉くんが指差したのはコーラルピンクの可愛らしいものだった。……地味子に似合うのかな?

「私、ピンク似合うかな?」

「きっと似合うと思うよ。心配ならBAさんに頼んで口紅試させてもらおう!」

「ビ、BAさん?」

また知らない言葉が出てきた。でも渉くんはウキウキした様子で店員さんに声をかけている。それから黒いスーツの女性がやってきて、口紅を塗られてしまった。

「とてもよくお似合いです!」

「歌川さん、すっごく素敵だよ!」

店員さんや渉くんにこれでもかと褒められ、恥ずかしい。でも胸の奥が温かい。

(メイクやおしゃれって楽しいのかな?)

購入することになったコーラルピンクの口紅を見つめ、私は胸のくすぐったさと共に思った。