また寝坊かしら……。

 メッセージが既読にならないのも電話に出ないのも、そう考えると納得がいく。

 営業部の彼は、金曜夜に接待の飲み会が入ることが多く、土曜の朝は寝坊しがちだ。それも考慮して、待ち合わせ時間は遅めにしたつもりだった。

 何かあったのかしら。もしかしたら途中で事故に遭って……ううん、きっと慌てて起きて準備しているのよ。だから私からの連絡には気づいていないだけなんだわ。

 彼のマンションに迎えに行った方が早いかとも思うが、入れ違いになったら今度は彼を待たせてしまう。

 とりあえず連絡がつくまでおとなしくこのままここで待っていよう。ただの寝坊ならいい。でもそれならやっぱり直接彼の部屋に行った方が……。

 思考が同じところをずっとグルグルしているうちに、時間ばかりが経ってしまった。お代わりのカフェラテはとうに冷めきっている。

 このカフェは土日限定のロコモコランチが人気らしく、昼時が近づいて席が埋まりつつある。ランチを頼むわけでもないにいつまでも席を埋めておくのは気が引けてきた。

 あと十分……十分だけ待ったら彼のマンションに行ってみよう。

 待ち受けに映るツーショットを眺めながらそう決意したとき、焦ったように近づいてくる足音が聞こえた。

 慎士⁉

 やっと来てくれたのだと期待しながら顔を上げた瞬間、目に飛び込んできたのはまったく別の人物だった。