イベントを終え、紗菜と怜司は帰りの車に乗り込んだ。
肩が触れるだけで鼓動が早くなる距離。
だけど紗菜はずっと俯いていた。
(舞さん……綺麗だったな……)
(怜司さんの隣に立つなら、ああいう人のほうが……)
胸がきゅっと痛む。
嫉妬というものが、こんなに苦しいとは知らなかった。
怜司が横目で紗菜を確認する。
「……黙りすぎだ」
「……ごめんなさい」
「謝るな。理由を言え」
怜司の声は強いわけではない。
ただ真っ直ぐすぎて逃げられない。
紗菜は胸に手を当て、小さく息を吸う。
「……私、怜司さんの隣に立つの……怖いんです」
怜司の指が、わずかに動いた気がした。
「舞さんみたいな人のほうが……怜司さんには、似合うから……」
俯いて呟くと、突然、手首を掴まれた。
ぐっと引き寄せられる。
息が止まるほど近い――怜司の顔。
「……紗菜」
名を呼ぶ声は低く、熱を帯びていた。
逃げ場を塞ぐように、もう片方の手が紗菜の腰に触れる。
「誰と俺を並べようが勝手だ」
「でも――俺が選んだのは、お前だ」
その声は、胸の奥まで響く。
紗菜は慌てて顔をそらそうとするが、怜司が顎に指を添えて止めた。
「見るんだ、紗菜。俺を」
どうしよう。
見たら、心臓が壊れそう。
でも……逃げられなかった。
怜司の瞳に自分が映っている。
その光が、限りなく優しくて、熱くて――思わず息を呑む。
「……お前が舞を見て不安になる必要はない」
怜司の親指が紗菜の唇の端をそっとなぞった。
「お前が嫉妬する相手は……俺だけでいい」
「っ……!」
そんな甘い声を、すぐ隣の席で、顔の距離数センチで囁かれたら――。
紗菜の視界が揺れた。
怜司はさらに顔を近づける。
ほんの少し、紗菜の唇が開く。
怜司の視線がそこに落ちた瞬間、車内の空気が一気に甘くしびれる。
「……紗菜」
怜司の指が頬を撫でる。
触れたところがじんじん熱くなる。
「キス、してほしいのか?」
耳まで一瞬で熱くなる。
紗菜は苦しそうに息を吸い、震えながら首を振った。
「ち、違っ……そういうのじゃ……ないです……!」
怜司の口元がゆっくり緩む。
挑発するような、甘い笑み。
「……じゃあ、“俺がしたい”と言ったら?」
心臓が止まりそうになった。
言えない。
でも、否定もできない。
怜司は紗菜の迷いをすべて見透かしたように、
そっと額を合わせてきた。
「……紗菜。お前が思ってる以上に、俺はお前を気にしてる」
額と額が触れたまま、唇の距離がほんの数センチ。
キスをする直前の静かな時間。
呼吸が混ざり合いそうなほど近い。
「……やめないと……私……」
「やめてほしいのか?」
怜司の声が甘く落ちる。
紗菜の唇が震えたその瞬間――。
車がカーブを曲がり、軽い衝撃で身体がわずかに揺れた。
怜司は不機嫌そうに舌打ちし、顔を離す。
「……今日はここまでだな」
“ここまで”。
つまり、あれは――本気のキスの直前だった。
胸が跳ね上がる。
紗菜は手を押さえ、必死に呼吸を整えた。
怜司は何事もなかったように窓の外へ視線を向けている。
だけど、その指先は紗菜の手を離していなかった。
(怜司さん……今、本気だった……?)
(キスされてたら……私、どうなってたんだろう)
痛いほど胸が締め付けられる。
でも、それ以上に――熱い想いが広がっていた。
それはもう、“偽り”ではなかった。
肩が触れるだけで鼓動が早くなる距離。
だけど紗菜はずっと俯いていた。
(舞さん……綺麗だったな……)
(怜司さんの隣に立つなら、ああいう人のほうが……)
胸がきゅっと痛む。
嫉妬というものが、こんなに苦しいとは知らなかった。
怜司が横目で紗菜を確認する。
「……黙りすぎだ」
「……ごめんなさい」
「謝るな。理由を言え」
怜司の声は強いわけではない。
ただ真っ直ぐすぎて逃げられない。
紗菜は胸に手を当て、小さく息を吸う。
「……私、怜司さんの隣に立つの……怖いんです」
怜司の指が、わずかに動いた気がした。
「舞さんみたいな人のほうが……怜司さんには、似合うから……」
俯いて呟くと、突然、手首を掴まれた。
ぐっと引き寄せられる。
息が止まるほど近い――怜司の顔。
「……紗菜」
名を呼ぶ声は低く、熱を帯びていた。
逃げ場を塞ぐように、もう片方の手が紗菜の腰に触れる。
「誰と俺を並べようが勝手だ」
「でも――俺が選んだのは、お前だ」
その声は、胸の奥まで響く。
紗菜は慌てて顔をそらそうとするが、怜司が顎に指を添えて止めた。
「見るんだ、紗菜。俺を」
どうしよう。
見たら、心臓が壊れそう。
でも……逃げられなかった。
怜司の瞳に自分が映っている。
その光が、限りなく優しくて、熱くて――思わず息を呑む。
「……お前が舞を見て不安になる必要はない」
怜司の親指が紗菜の唇の端をそっとなぞった。
「お前が嫉妬する相手は……俺だけでいい」
「っ……!」
そんな甘い声を、すぐ隣の席で、顔の距離数センチで囁かれたら――。
紗菜の視界が揺れた。
怜司はさらに顔を近づける。
ほんの少し、紗菜の唇が開く。
怜司の視線がそこに落ちた瞬間、車内の空気が一気に甘くしびれる。
「……紗菜」
怜司の指が頬を撫でる。
触れたところがじんじん熱くなる。
「キス、してほしいのか?」
耳まで一瞬で熱くなる。
紗菜は苦しそうに息を吸い、震えながら首を振った。
「ち、違っ……そういうのじゃ……ないです……!」
怜司の口元がゆっくり緩む。
挑発するような、甘い笑み。
「……じゃあ、“俺がしたい”と言ったら?」
心臓が止まりそうになった。
言えない。
でも、否定もできない。
怜司は紗菜の迷いをすべて見透かしたように、
そっと額を合わせてきた。
「……紗菜。お前が思ってる以上に、俺はお前を気にしてる」
額と額が触れたまま、唇の距離がほんの数センチ。
キスをする直前の静かな時間。
呼吸が混ざり合いそうなほど近い。
「……やめないと……私……」
「やめてほしいのか?」
怜司の声が甘く落ちる。
紗菜の唇が震えたその瞬間――。
車がカーブを曲がり、軽い衝撃で身体がわずかに揺れた。
怜司は不機嫌そうに舌打ちし、顔を離す。
「……今日はここまでだな」
“ここまで”。
つまり、あれは――本気のキスの直前だった。
胸が跳ね上がる。
紗菜は手を押さえ、必死に呼吸を整えた。
怜司は何事もなかったように窓の外へ視線を向けている。
だけど、その指先は紗菜の手を離していなかった。
(怜司さん……今、本気だった……?)
(キスされてたら……私、どうなってたんだろう)
痛いほど胸が締め付けられる。
でも、それ以上に――熱い想いが広がっていた。
それはもう、“偽り”ではなかった。



