「……おい。聞こえてるか?」
低く、冷たい声が、朦朧とした意識の端を揺らした。
莉子がゆっくり目を開けると、そこは薄暗いコンクリートの部屋。
壁はむき出しで、家具は一つもない。
「……え?」
体を動かそうとした瞬間、背中に冷たい金属の感触。
腕と足はロープできつく縛られていた。
(なに…ここ……どうして私……)
恐怖が喉を絞めた。
「起きたか?」
その声に顔を向ける。
部屋の隅、パイプ椅子に座る一人の少年。
黒髪で、切れ長の目。
冷たさの奥に、どこか寂しさを感じさせる表情。
誰が見ても“イケメン”と呼ぶだろう雰囲気。
彼も腕を縛られていたが、指先を器用に動かし、ロープを緩めている。
数秒後。
パサッ…と、彼の手が自由になった。
「大丈夫か?」
彼はそう言いながら、周囲を警戒するように視線を走らせ、莉子のもとへ歩み寄った。
手には、小さなカッターナイフ。
「っ……!」
「怖がらなくていい。これは護身用だ。――ほら、縛りを切るのに使う」
少年は自分の手首に残る赤い痕を見せる。
確かに、縛られていた形跡がある。
莉子はまだ震えが止まらなかったが、縛りから解放されたくて、身を任せるしかなかった。
「動かないで。すぐ終わる」
彼の指がロープに触れる。
鋭い刃が、縛り目を静かに切り裂いた。
――彼の声。
――落ち着いた仕草。
――どこかで、聞いたことがある。
(誰…? この感じ……)
思い出せそうで、思い出せない。
当然だ。
彼こそが、幼いころ近所の公園でいつも莉子と遊んでいた少年――
七海奏叶(ななみ かなと)
莉子の初恋の相手だからだ。
だが今の莉子はまだ気づいていない。
「行くぞ」
「え…?」
「ここに長居したら危ない」
奏叶は扉の前に立ち、慎重にノブを回した。
ギィィ……と音を立てて扉が開く。
廊下には誰の気配もない。
ただ、足元に落ちているスマホと、封筒が一つだけ。
嫌な予感がした。
奏叶が封筒を拾い、紙を広げる。
――『脱出したければ、このスマホに届く指示に従え。』
「はぁ……めんどくさいことになってるな」
奏叶は眉をわずかにひそめた。
「で、でも…従うしかないよね……?」
「そうだな。生きて出るには、それしかない」
スマホの画面が急に点灯した。
“ミッション① 開始”
莉子は息をのむ。
奏叶は深くため息をつきながらも、莉子の方へ手を差し伸べた。
「行くぞ。離れるなよ」
莉子は怖さを噛みしめながら、その手をそっと取った。
背後で扉が静かに閉まる。
二人の脱出劇は、こうして始まった。
低く、冷たい声が、朦朧とした意識の端を揺らした。
莉子がゆっくり目を開けると、そこは薄暗いコンクリートの部屋。
壁はむき出しで、家具は一つもない。
「……え?」
体を動かそうとした瞬間、背中に冷たい金属の感触。
腕と足はロープできつく縛られていた。
(なに…ここ……どうして私……)
恐怖が喉を絞めた。
「起きたか?」
その声に顔を向ける。
部屋の隅、パイプ椅子に座る一人の少年。
黒髪で、切れ長の目。
冷たさの奥に、どこか寂しさを感じさせる表情。
誰が見ても“イケメン”と呼ぶだろう雰囲気。
彼も腕を縛られていたが、指先を器用に動かし、ロープを緩めている。
数秒後。
パサッ…と、彼の手が自由になった。
「大丈夫か?」
彼はそう言いながら、周囲を警戒するように視線を走らせ、莉子のもとへ歩み寄った。
手には、小さなカッターナイフ。
「っ……!」
「怖がらなくていい。これは護身用だ。――ほら、縛りを切るのに使う」
少年は自分の手首に残る赤い痕を見せる。
確かに、縛られていた形跡がある。
莉子はまだ震えが止まらなかったが、縛りから解放されたくて、身を任せるしかなかった。
「動かないで。すぐ終わる」
彼の指がロープに触れる。
鋭い刃が、縛り目を静かに切り裂いた。
――彼の声。
――落ち着いた仕草。
――どこかで、聞いたことがある。
(誰…? この感じ……)
思い出せそうで、思い出せない。
当然だ。
彼こそが、幼いころ近所の公園でいつも莉子と遊んでいた少年――
七海奏叶(ななみ かなと)
莉子の初恋の相手だからだ。
だが今の莉子はまだ気づいていない。
「行くぞ」
「え…?」
「ここに長居したら危ない」
奏叶は扉の前に立ち、慎重にノブを回した。
ギィィ……と音を立てて扉が開く。
廊下には誰の気配もない。
ただ、足元に落ちているスマホと、封筒が一つだけ。
嫌な予感がした。
奏叶が封筒を拾い、紙を広げる。
――『脱出したければ、このスマホに届く指示に従え。』
「はぁ……めんどくさいことになってるな」
奏叶は眉をわずかにひそめた。
「で、でも…従うしかないよね……?」
「そうだな。生きて出るには、それしかない」
スマホの画面が急に点灯した。
“ミッション① 開始”
莉子は息をのむ。
奏叶は深くため息をつきながらも、莉子の方へ手を差し伸べた。
「行くぞ。離れるなよ」
莉子は怖さを噛みしめながら、その手をそっと取った。
背後で扉が静かに閉まる。
二人の脱出劇は、こうして始まった。



