彼と、花火と、観覧車

「えっと、どうしてここにいるの?」
「俺は仕事で。クライアントの事務所があそこのビルの中で、打ち合わせがあったから」

 納得するように、ゆっくりとうなずいた。
 近年、この周辺は市が誘致を進めているため、企業のオフィスがたくさんある。
 本当に偶然、夏生は今日仕事でこの場所を訪れていたのだ。

「羽衣は? ずいぶん綺麗な格好してるな」
「私は結婚パーティーに参加してて……」

 話している最中にクシュンとくしゃみが出て、あわてて片手で口もとを覆った。

「寒いだろ」

 彼が自分のジャケットを脱いで、私の肩にそっと掛けた。
 そこに残っていたぬくもりが伝わってきて、一気に寒気が治まってくる。

 変わっていないなと思った。
 高校生のころからこういうときは必ず、夏生はさりげなくやさしかったから。それを思い出してしまった。

「ありがとう」
「で、結婚パーティーだったの?」
「真木先輩のだよ」

 ふと夏生の顔を見ると、きょとんとしたまま固まっていた。
 なにかおかしなことを言っただろうかと思いつつ、無言で首をかしげて反応を待った。