彼と、花火と、観覧車

「やっぱり、ちょっとだけでも会いたかったな」

 先ほどから夏生の顔が頭に浮かんで、なかなか消えてくれない。
 ランドマークになっている観覧車がゆっくりと回るのを見つめていると、なんだかとても切なくなった。
 まだ昇華できていない自覚はあったものの、こんなにも彼への気持ちが残っていたとは……。自分でも驚きだ。

「うぅ、寒いかも」

 ひとめ惚れして買ったワインレッド色のパーティードレスは、袖とデコルテの部分が薄いレース生地でできている。
 上品な透け感が美しくて、とても気に入っているのだけれど、四月にこの格好だとさすがに夜は冷える。
 自分の腕を掻き抱きながら、上着を持ってくればよかったと後悔した。

「……羽衣?」

 夏生の声だ。……いや、そんなはずはない。ついに幻聴まで聞こえてきたらしい。
 風邪を引く前に帰ろうと振り向いたら、ぽつんと佇む長身の男性がこちらを見ていた。

「夏生?!」
「やっぱり羽衣だ。人違いじゃなかった」

 幻聴なんかじゃなかった。目の前にいるのは本物の夏生だ。
 なんという偶然だろう。