彼と、花火と、観覧車

「……さすがにもう思い出だよ」
 
 ふるふると首を振り、視線を逸らせてごまかした。
 澄香にはそう言ったけれど、ずっとこじらせてきた片思いは、今もなかなか昇華してくれなくて困っている。
 前に進もうと思うものの、会っていなくても心のどこかに彼がいるのだ。
 
 澄香と話していたら、真木先輩が方々(ほうぼう)に声をかけながらこちらへ近づいてくるのがわかった。

「先輩、ご結婚おめでとうございます」

 あらためてお祝いの言葉を贈る私たちに気づき、真木先輩がにこりと微笑んだ。

「ふたりとも今日は来てくれてありがとう」

 その表情から、あふれんばかりの幸せが伝わってきて、胸の中が温かくなる。
 心から愛する人と結ばれて、本当にうれしいのだろうな。

「……あれ? 夏生は来てないの?」

 キョロキョロを辺りを見回す先輩に、苦笑いで首をかしげた。

「……見ていませんね」
「そうか。残念。久しぶりに会いたかったなぁ」

 もしかしたら会えるかもしれないと私も考えていたけれど、彼は姿を現さなかった。

「仕事が忙しいんじゃないかと……」