彼と、花火と、観覧車

「夏生、ありがとう」
「ん?」
「こんなに綺麗な夜景が見られるなんて思ってなかったから」

 にこりと笑って感謝を伝えると、なぜか彼はとまどうように視線を逸らせた。

「……不意打ち。ものすごい破壊力」
「え? なに?」
「なんでもない」

 決まり悪そうな顔で小さくつぶやく彼に、私は首をかしげるしかない。
 なにか変なことを言ったかな? 心当たりはないけれど。

「あ! 写真とか動画、撮ればよかった」

 バッグからあわててスマホを取り出していると、向かいに座る彼がふわりと笑った。

「そりゃ、撮影は夏生のほうがうまいだろうけど」
「いや、そういう意味で笑ったわけじゃないよ。かわいいなと思っただけ」

 心臓が再びドキンと大きく脈を打った。
 かわいいとか、ムード満点のこの場所でサラリと言わないでもらいたい。顔が熱くなってくる。

 あと数分でこの景色は見られなくなるのだから、とにかく撮影しなければ……。
 邪念を払いつつスマホのカメラを起動しているときだった。
 ヒュッという音がゴンドラの外から聞こえた気がして視線を上げた。

 ――――ドン! ドドン!

「……ウソ」