彼と、花火と、観覧車

「ゴンドラを降りるまでに、どこかで花火が上がったら、俺と付き合う」
「え? 花火?」

 話をしていたら、いつの間にかゴンドラはもう頂上付近まで来ていた。このあとはゆっくり下降していく。
 一周十五分だから、残りは七~八分ほどだ。
 そんな短時間のあいだに、タイミングよくサプライズは起こらないだろう。

「このまま打ち上がらなかったら?」
「今夜はあきらめる。後日また告白するけど」
「なにそれ」

 夏生は私に考える時間をくれようとしているのかな。
 先ほど気持ちを伝えてくれたのは、冗談ではなく本当だと思うから。
 そもそも彼は人を傷つけるような冗談を口にしたりしない。

「花火って、しょっちゅう見られるものじゃないよ?」
「そうだな。だからこそ、俺たちがこれに乗ってるときに上がったら、運命感じないか?」

 たしかにそうだが、待っていても起こるはずがない。さすがに不毛な気がする。
 彼だってそう言いつつ、たいして期待していなさそう。

「羽衣、そんなに構えなくていいよ」

 もしかしたら……と無意識にソワソワしていたみたいで、夏生に見抜かれてしまった。

「気楽に夜景を楽しもう」
「そうだね」

 ゴンドラがついに下降を始めたが、まだ頂上に近いため、夜景は三百六十度堪能できる。
 キラキラとした街の光が絨毯みたいに広がっていて、本当に感動するほど美しい。