彼と、花火と、観覧車

「うわぁ、綺麗な景色」
「今、二分経ったから、あと十三分だな」

 夏生が左手につけている腕時計で時間を確認して、つぶやくようにそう言った。
 この観覧車は十五分で一周するらしい。

「じゃあ、あと五分くらいで頂上かぁ」

 地上の建物がどんどん小さくなっていく。
 私たちはキョロキョロとしながら、パノラマ状に広がる綺麗な夜景を楽しんだ。
 そんな中、なにげなく彼の膝もとがふと視界に入り、本当に長い脚だなと感心してしまう。

「……羽衣、覚えてる?」

 窓の外を見ていたはずの彼が、気がつくとこちらへ視線を向けていた。

「昔、大学の先輩たちとの飲み会で、酔った澄香が暴言吐きまくってたこと」
「ああ、あれね」

 彼が口にしたのは、大学三年の出来事だ。
 あのとき澄香は失恋したばかりで、誘われた飲み会で大量にお酒を飲んで泥酔していた。
 ただ酔っただけならまだよかったけれど、男性の先輩たちを相手にしつこく絡みまくり、みんなを困らせていたのだ。
 澄香にとっては、記憶から消し去りたい“黒歴史”だろう。

「もちろん覚えてるよ。先輩たち、だんだん不機嫌になってきちゃってヒヤヒヤしたもん」

 ふたりともあの日のことを思い出し、アハハと声に出して笑った。
 今となってはいい思い出だ。