彼と、花火と、観覧車

「めちゃくちゃ大きいんだな」
「うん。私もそう思った」

 乗り場に到着して、そびえ立つ観覧車を見上げる。

 近くにいる見知らぬ女の子たちが彼を見て、「あの人カッコいいね」とヒソヒソ話をしていた。
 夏生は顔もスタイルもいいから、真木先輩以上に昔からよくモテた。どうやら今はさらに拍車がかかっていそうだ。

「今ならほとんど待ち時間なしだって」

 有人窓口へ行き、ふたり分のチケットを購入した夏生が戻ってきた。

「本当に乗るつもりだったんだね」
「もちろん。あんなところにずっといたら、羽衣は寒いだろ? それに、ちょっと話もあるし」

 話ってなに?
 そう尋ねようとした瞬間、クシュンともう一度くしゃみが出て、タイミングを失った。

「大丈夫か?」
「うん。帰ったらあったかいお風呂に浸かる」

 心配そうな面持ちで私を見つめる彼に、大丈夫だという意味を込めて笑みをたたえた。
 きっと、ゴンドラの中は風もなくて外よりも暖かいはずだ。

 スタッフにチケットを渡し、誘導されるままに観覧車へ乗り込む。
 ぐらぐらと揺れる中、私と夏生はバランスを取るよう対面の位置に座った。

「羽衣、怖くない?」
「ゴンドラとかエレベーターとか、周りに囲われてるものがあるなら平気かも」
「淡路島の観覧車だったかな? 一部に特別なゴンドラがあって、床がガラス張りらしいよ」
「それは怖そう。スリル満点だね」

 腕を掻き抱きながら小刻みに首を振る私を見て、彼は小さく笑った。
 たわいない会話をしているうちに、ゴンドラがどんどん上昇していく。