転生聖女〜現代日本に転生したら、勇者と魔王も同じクラスだったのでクラス替えお願いします

 楽しいクリスマスも終わった年の瀬。

 ありがたいことに大掃除も終わってるから、私はダラダラしつつ、宿題したりお節を作ったり味見したり味見したりしてた。

 大晦日の夕方、ルイとリオンが訪ねてきた。


「初詣行こうぜ」

「この世界の神に会えるかもしれない」


 なぜかテンション高めのリオンに、ママが笑った。


「会えないわよ。こっちの世界の神様は基本的には御隠れだから」

「そうなのか……? 百八万もいるのに?」

「それは日本だけでね。地球全体で見たらもっといるけど、前世みたいにその辺にいるわけじゃないのよ」


 前世でも、『その辺』にはいなかったけど、話が長くなるから黙っておく。

 夜に真野さんが来て、ママと真野さんで年を越すらしい。


「ふうん。じゃあお邪魔になっちゃうし、初詣行こう」

「あなたが家にいたければ、総一郎さんはお断りするけど」

「ううん、ルイとリオンと行ってくるよ。準備するから、二人とも待ってて」


 ママが、二人にお茶やお菓子を出してくれると言うのでお願いして、私は自分の部屋に戻った。

 コートを出してきて、ピアスとブレスレットに引っ掛けないように羽織る。

 カバンを背負ってリビングに行くと、三人はそれぞれスマホの地図アプリを見ていた。


「何してるの?」

「初詣、どこに行くか相談してた」

「決めてなかったの? 近くでいいんじゃない?」

「ゆく年くる年に映りたいんだよ」

「ああ、三人で映りそうな神社の予想をしていた」


 笑っちゃうくらい平和だ。


 なんとか行き先を決めて家を出た。

 バスと電車で一時間くらい移動して、少し大きい神社にやってきた。

 参道の両脇にずらりと屋台が並んでいる。


「温かいもの食いてえな」

「僕はリンゴ飴の小さいのを」

「私、イカ焼き!」

「協調性がねえよ。聖女と魔王だし、仕方ねえのか……?」


 結局三人それぞれ好きなものを買って、お参りの列に並んだ。


「あのさ、俺とリオンで決闘したんだよ」


 買ってきたイカ焼きをかじっていたら、苦笑いのルイに言われた。並んで立つリオンも似たような苦笑を浮かべている。


「決闘?」

「うん。どっちがエミリと付き合うかっていう」

「なにそれ、初めて聞いたけど」

「言ってねえから」

「負けた方は潔く身を引こうとしたんだがな」


 含みのある言い方だ。


「火渡とケントに立ち会いしてもらって、いろいろやったけど決着がつかなかったんだよ」

「いつの間に?」

「クリスマスの次の日から昨日まで。えっと、柔道と相撲と徒競走と……」

「柔道? 相撲?」

「二学期に男子体育であったんだよ。あと歌ったり朗読したり」

「なんでそんな面白そうなの呼んでくれなかったの……」

「あとさ」


 ルイがふふっと笑い出した。


「ケントがドラ○もんブームだからって、あやとりと射的もやらされたわ」

「しかし、なかなかよかったから僕も大長編のコミックを借りたんだ。春休みに一緒に新作を観に行こう」

「う、うん……?」


 結局決闘はどうなったんだろう。

 他にもいろいろやったと教えてくれたけど、決闘というより冬休みにはしゃいでいる男子高校生だ。

 いや、正解なんだけど。


「で、決着がつかなかったからさ、とりあえず三人でよろしくやろうってことになったわけよ」

「そうだ。エミリは縁を切るときに『聖女ではない、ただの私を好きになって』と言った。僕らも同じ想いだ。魔王ではない僕を好きになってほしい」

「勇者じゃない俺のこと好きになってくれ」

「……うん。なる。なりたい」


 ルイとリオンが笑って、私の手を取った。

 私は二人の手を握り返した。

 こちらの人間の寿命は平均して八十から九十年くらいらしい。

 つまりあと六十から七十年はある。


「楽しみだなあ。ね、何しようか」

「俺、甘酒飲みたい」

「僕も欲しい」

「私も飲む」


 まずは甘酒を飲んで、お参りしよう。

 私はもう聖女じゃないけど、神様にこれからの平和を祈りに行こう。