「やはり、足が早い方がモテるのだろうか」
帰り道、リオンがスタジアムを見上げながら言った。
「んな、小学生じゃあるまいし」
そう返すと、リオンはムスッとした顔で私を覗き込んだ。
「エミリは、足が早い方が好みか?」
「勇者は足が早い方がいいよ、そりゃ。でも別に同じクラスの男の子は気にしない。それに、リオンにはリオンでいいところあるから、そこでルイと競わなくていいよ」
「……手をつないでも?」
「えっなんで……まあ、いいけどさ」
リオンは嬉しそうに目を細めて私の手を取る。
大きくて、節くれ立っていて、ちょっと汗ばんでいて……男の子の手だった。
その日の夜、ベッドで寝転がっているとルイから電話がかかってきた。
『今日は応援に来てくれてありがとな。魔王、なんか言ってた?』
「褒めてたよ。あと「足が早い方がモテるのだろうか」って」
『小学生かよ』
ルイはゲラゲラ笑った。
でもすぐに声を潜めた。
『あー……あとさ、揉めてたの、見た?』
「うん、見た」
『全部?』
「全部って? ルイが止めに入ってるのは見たよ。そのあと、先生たちも出てきて、大変そうだったから、早めに帰った」
そう言うとルイは電話の向こうで唸った。
『いや、それがさあ、そういう喧嘩が、何回もあったんだよね』
「えっ、あれだけじゃなかったんだ」
『うん。うちの学校の陸部でも揉めたやついて……でも、普段は大人しい、落ち着いたやつなんだけど』
ルイは口ごもった。
私から言えることなんて、何もない。
「あの、ルイ」
『うん』
「今日のルイ、かっこよかったよ」
『ありがとう。えっと、見に来てくれたことも』
「うん。ルイ、疲れたでしょ。もう寝よう。私も寝るから」
『おやすみ、エミリ。またいつか、直接言いたい』
その言葉を、私はどう受け取ればいいんだろう。
嬉しくないと言えば嘘になる。
でも、今すぐまったく同じ気持ちを返すことができない。
「ルイ、ありがとう」
だから、一言だけ返す。
それしか、言えない。少なくとも今は。
ルイは笑って電話を切った。
「ごめん、ルイ」
スマホを伏せて部屋の灯りを消した。
この感情を誰かどうにか、してほしかった。
帰り道、リオンがスタジアムを見上げながら言った。
「んな、小学生じゃあるまいし」
そう返すと、リオンはムスッとした顔で私を覗き込んだ。
「エミリは、足が早い方が好みか?」
「勇者は足が早い方がいいよ、そりゃ。でも別に同じクラスの男の子は気にしない。それに、リオンにはリオンでいいところあるから、そこでルイと競わなくていいよ」
「……手をつないでも?」
「えっなんで……まあ、いいけどさ」
リオンは嬉しそうに目を細めて私の手を取る。
大きくて、節くれ立っていて、ちょっと汗ばんでいて……男の子の手だった。
その日の夜、ベッドで寝転がっているとルイから電話がかかってきた。
『今日は応援に来てくれてありがとな。魔王、なんか言ってた?』
「褒めてたよ。あと「足が早い方がモテるのだろうか」って」
『小学生かよ』
ルイはゲラゲラ笑った。
でもすぐに声を潜めた。
『あー……あとさ、揉めてたの、見た?』
「うん、見た」
『全部?』
「全部って? ルイが止めに入ってるのは見たよ。そのあと、先生たちも出てきて、大変そうだったから、早めに帰った」
そう言うとルイは電話の向こうで唸った。
『いや、それがさあ、そういう喧嘩が、何回もあったんだよね』
「えっ、あれだけじゃなかったんだ」
『うん。うちの学校の陸部でも揉めたやついて……でも、普段は大人しい、落ち着いたやつなんだけど』
ルイは口ごもった。
私から言えることなんて、何もない。
「あの、ルイ」
『うん』
「今日のルイ、かっこよかったよ」
『ありがとう。えっと、見に来てくれたことも』
「うん。ルイ、疲れたでしょ。もう寝よう。私も寝るから」
『おやすみ、エミリ。またいつか、直接言いたい』
その言葉を、私はどう受け取ればいいんだろう。
嬉しくないと言えば嘘になる。
でも、今すぐまったく同じ気持ちを返すことができない。
「ルイ、ありがとう」
だから、一言だけ返す。
それしか、言えない。少なくとも今は。
ルイは笑って電話を切った。
「ごめん、ルイ」
スマホを伏せて部屋の灯りを消した。
この感情を誰かどうにか、してほしかった。



