転生聖女〜現代日本に転生したら、勇者と魔王も同じクラスだったのでクラス替えお願いします

 七月頭の教育実習最終日。

 放課後の教室でケントが皐月先生の手を握りしめていた。


「いろはさん。卒業したら迎えに行きます」

「や、来なくていいです」

「行きます。あなたは俺の運命の人なんです」


 真顔のケントに皐月先生はたじろいで、私を見る。


「野良聖女、あんたの仲間なんとかしなさいよ」

「今聖女じゃないから無理。ていうかサキュバスなんだから、人間の男くらい自分であしらってよ」


 私は普通にこいつが苦手なので、あんまり助ける気にならない。

 こいつが前世で、村人全員を誘惑して襲ってきたことを、まだ根に持っているので。


「今はサキュバスじゃないし! それに、自分から攻めることはあっても、相手から来るってないから、ちょっとどうしていいのやら……」

「ケント、皐月先生は攻められると弱いってさ」

「あなたが俺を好きになるまで頑張りますね♡」

「この駄聖女!!」


 皐月先生はキャンキャン騒いでいるけど、手を振りほどかないし、ケントに不満を言うわけでもない。

 まあ、放っておいていいと思う。


「じゃあ、私帰る。サキュバスの顔見てると前世思い出してムカつくし」

「ちょっ」

「なら僕は部活に行く。新刊の感想会があるからな」

「魔王様まで!」

「俺も部活行くわ。期末試験中は走れなくなるから、今のうちに身体動かしてえし。エミリ、校門まで送る」

「おー、また明日なー」


 ケントと皐月先生に笑顔で手を振って、三人で教室を出た。

 途中でリオンとも分かれて、昇降口を出る。


「すっかり夏だねえ」

「なー。あ、デートどこがいい?」


 ルイがこてっと首を傾げる。


「そんな約束してたっけ?」

「試験でさ、一番成績がいい奴とデートするんだろ?」

「私が一番になって、デートなんかしない」


 そう言うと、なぜかルイは笑顔になった。


「俺らのこと嫌い?」

「……ううん。嫌いじゃない。嫌いじゃないから、どっちかを悲しませたくないな」

「そっか。俺はエミリのこと好きだよ。前世からずっと好きだ。前世はちょっとばたついててさ、エミリのこと幸せにできなかったから、今度こそ普通に幸せにしたいんだ。できれば、一緒に幸せになりたい」


 魔族と魔王退治の旅を「ちょっとばたついてた」の一言で済ませちゃうのはどうかと思う。

 でも、わからなくはない。


「ありがとうルイ。気持ちだけもらっておく。ほら、部活行っておいでよ。夏休みに大会とかあるんでしょ?」

「うん。応援来てくれよ」


 ルイは手を振って校庭のほうに走って行った。

 私は一人で校門を出た。

 幸せかあ。


 ……こうやって手を振って分かれても「また明日」があるのは、十分幸せなことに思えた。