雲の花嫁

 これほどまでに死者を悼む御方を、どうして悪しき存在と呼べようか。
 重ねたままの手を、ユイはきゅっと握りなおした。


「あの、差し出がましいことを申すのですが、こちらのお墓、わたくしが手入れさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「……いや」


 クロードは目を丸くしてから、ゆっくりと首を横に振った。
 図々しかったかしらと思ったユイが謝る前に、クロードが微笑んだ。


「一緒にやろう。彼女たちは、僕の妻だから」

「……はい!」

「君にも、そうなってほしいな。そう言ってくれたのは、君が初めてだよ」


 クロードは静やかに手を掲げ、白銀の環を差し出した。


「はい……不束者ですが、よろしくお願いいたします」


 ユイが左手を差し出すと、白銀の輪は薬指にピタリと収まる。
 彼女を見下ろす眼差しは深い青で、好きな色だと思った。

 雲上にありながら、蒼穹(そうきゅう)はなおも高く、深き青を湛えてユイを包み込んでいた。


 こうして、二人の生活が始まった。