雲の花嫁

 雲の切れ間から朝の光が差しこみ、村の屋根を金色に染めていった。
 祭壇に残された寝台には、すでにユイの姿はなかったが、白布の上には一輪の白い花が静かに置かれていたという。

 人々はそれを「神が連れ帰った証」と語り継ぎ、以後、誰ひとりとして生贄を差し出すことはなかった。

 空を仰げば、やわらかな雲が寄り添い、離れず、永遠に漂っていた。