雲の花嫁

「お願いがございますの」


 それは、かつてユイが一度だけ口にした願いだった。


「わたくし、地上に戻りましても、なおあなた様の妻を辞するつもりはございません。……ゆえに、身は朽ちても、魂を迎えに来てくださいますか?」

「……もちろんだとも。しかし、神の手に渡った魂は輪廻から外れ、未来永劫生まれ変わることができなくなる。それでも……いいのかい?」

「もちろんでございます。……わたくし、嫉妬深うございますゆえ。寂しさのあまり、わたくし以外の妻を迎えられることなど、決してお許し致しません」

「そうか。承知した、我が妻よ」


 クロードは微笑んで、ユイの願いを聞き入れた。
 その約束は、半世紀後に果たされた。