蒼銀の王女と誓約の騎士〜生贄として連れてこられた神殿で、千年の眠りから覚めた騎士と出逢いました〜

――白い花が舞っていた。
――優しい声が耳元で囁く。

『あなたは……必ず未来を繋ぐ人……』

『どうか、生きて……エルフリーデ……』


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「……!」

はっと息を吸った瞬間、
エリシアは膝から崩れ落ちた。

「どうした」

兵士が訝しむが、
エリシアは言葉を返せない。
胸の奥に残る “誰かの悲しみ” の余韻に呑み込まれていた。

――その時だった。

神殿の奥、巨石の扉に深い亀裂が走る。

バキィィッ……!

「地震か!?」

「退がれ!」

兵士たちが慌てて後退する。

だがエリシアだけは動けなかった。
扉の向こうから、誰かの呼ぶ声がする。

(……エリシア)

(――姫……)

まるで “恋い焦がれた誰か” の声のように、
胸に直接響いてくる。

そして──

封印は破られた。

眩い蒼銀の光が吹き荒れ、兵たちを弾き飛ばす。

その中心に、ひとりの騎士が立っていた。

長い封印の眠りから覚めたばかり
とは思えないほど整った姿。
夜のような黒髪、鋭い蒼の瞳。
古代の紋章が刻まれた鎧をまとい、
風にマントを揺らしている。

彼はゆっくりと、エリシアへ歩み寄った。

その瞳が、震えていた。