エリシアが古代神殿へ連れてこられたのは、
夕陽が沈み、
空が茜から群青へ変わり始める頃だった。
馬車の扉が開くと、
冷たい海風が頬を刺した。
断崖の上に建つ巨大な神殿遺跡。
千年前に滅びたルーヴェル王国の象徴だと、
孤児院の先生が言っていた場所。
だがエリシアは、
ここに来るのが 「生贄として」 だとは、
つい数日前まで知らなかった。
「降りろ、少女」
アーゼンハイト帝国の兵士が、
無機質な声で命じる。
エリシアは怯えつつも、無言で従った。
膝が震えているのを悟られないように腕を押さえる。
(私が……生贄なんて……どうして)
自分が選ばれた理由など分からない。
身寄りのない孤児だからか。
それとも、この異様な髪と瞳のせいか。
蒼銀の髪、薄い青の瞳。
珍しい色のせいで、
“不吉な印” と噂されることもあった。
だがエリシアは、それを否定する術も持たない。
神殿の中は、静寂が支配していた。
足を踏み入れた瞬間──
空気が震えた。
まるで、何かが “呼吸” を始めたように。
「っ……?」
エリシアが足元を見下ろすと、
崩れた床に刻まれた紋章──
青い光が脈打ち、
生き物のように揺らめいていた。
(な、に……これ……)
胸が痛い。
心臓が誰かに掴まれたように早鐘を打つ。
その瞬間──
エリシアの視界が白に染まった。
夕陽が沈み、
空が茜から群青へ変わり始める頃だった。
馬車の扉が開くと、
冷たい海風が頬を刺した。
断崖の上に建つ巨大な神殿遺跡。
千年前に滅びたルーヴェル王国の象徴だと、
孤児院の先生が言っていた場所。
だがエリシアは、
ここに来るのが 「生贄として」 だとは、
つい数日前まで知らなかった。
「降りろ、少女」
アーゼンハイト帝国の兵士が、
無機質な声で命じる。
エリシアは怯えつつも、無言で従った。
膝が震えているのを悟られないように腕を押さえる。
(私が……生贄なんて……どうして)
自分が選ばれた理由など分からない。
身寄りのない孤児だからか。
それとも、この異様な髪と瞳のせいか。
蒼銀の髪、薄い青の瞳。
珍しい色のせいで、
“不吉な印” と噂されることもあった。
だがエリシアは、それを否定する術も持たない。
神殿の中は、静寂が支配していた。
足を踏み入れた瞬間──
空気が震えた。
まるで、何かが “呼吸” を始めたように。
「っ……?」
エリシアが足元を見下ろすと、
崩れた床に刻まれた紋章──
青い光が脈打ち、
生き物のように揺らめいていた。
(な、に……これ……)
胸が痛い。
心臓が誰かに掴まれたように早鐘を打つ。
その瞬間──
エリシアの視界が白に染まった。



