蒼銀の王女と誓約の騎士〜生贄として連れてこられた神殿で、千年の眠りから覚めた騎士と出逢いました〜

セドリクスはエリシアを抱えたまま、
古代魔術の詠唱を開始する。

「――蒼光よ、我が誓いに応えよ」

彼の足元に蒼い紋が浮かび、
地面がふっと軽くなった。
次の瞬間、
風を裂く速度で森を駆け抜けた。

松明の光があっという間に遠ざかり、
兵士の怒号は闇に沈んでいく。

「すごい……なに、これ……」

「古代の術です。あなたを守るためなら、私は何でも使います」

その一言に、エリシアの心臓が跳ねた。

(……どうして。こんな人が、私なんかを……?)

頬に夜風が触れる。
胸の奥が熱くなる。

一方、
セドリクスの心には、別の葛藤が渦巻いていた。

――これは、姫への裏切りなのか。
――それとも、これは……エリシアへの……

「……っ……」
彼は走りながら、
胸に去来する感情を押し殺した。

「安全な場所まで、あと少しです。
必ず……あなたを、守ります」

その声は、
千年前止まってしまった想いの続きだった。

森の奥深くへ。
二人の逃亡は、ここから本当の物語へと繋がっていく――。