雨の王妃 ~私を押しのけて自分が聖女だと言ったくせに、失敗したら、生贄になると聞いた途端、私が聖女だと言ってきました~

 

 なにここ。

 太い柱がいっぱいで、壁がない。
 神殿みたいな……。

 龍美は尻餅をついたまま、自分を覗き込む古代エジプト人みたいな、腰布一枚のおじさんたちを見上げていた。

「聖女様……?」
「この方が聖女様か」
「王族と同じ、艶やかな長い黒髪。なにより、美しい」
「聖女じゃなくても、この娘を崇め奉りたい」

 なんか一人、おかしな人が混ざってますよ、と龍美が思ったとき、
「ちょっとーっ」
と後ろで声がした。

 麻田リラが立っていた。
「安野が聖女ってなによっ。
 聖女と言えば、私でしょうっ?」

 私が聖女もおかしいですが、あなたが聖女もおかしいです、と思いながら、背後で仁王立ちになっているリラを振り返る。