雨の王妃 ~私を押しのけて自分が聖女だと言ったくせに、失敗したら、生贄になると聞いた途端、私が聖女だと言ってきました~

 

 その日、帰ろうとした途端に雨が降りはじめたので、安野龍美(あんの たつみ)は一旦、校舎に戻った。
 昇降口の軒下から空を見上げていると、同じように濡れて戻ってきた女生徒がいた。

 麻田(あさだ)リラ。

 茶髪でウェーブのついた肩までの髪。
 ピンクダイヤのような丸いピアス。
 小柄で小さな顔に大きな瞳。

 ……ちなみに、うちの高校は、茶髪もパーマもカラコンもつけまつげも禁止だ。

 彼女に言わせれば、
「髪が傷んで、茶髪になって、勝手にくるくる巻いてきたんです。
 耳には気がついたら、光る石が張り付いていました。宇宙人の仕業じゃないですか?

 瞳が大きすぎる?
 いつもなにかに驚いてるからじゃないですかね?

 瞳の色が違うのは、外で農作業をしていたせいで目をやられたんです」
ということなのだが――。

 一緒に雨宿りをするもの同士、ここは、愛想のひとつも振って、と龍美は微笑みかけてみたが、ふん、と視線をそらされる。

 おう、噂通り、面倒臭い人だ。

 昔一緒に班活動をしたとき、細かいことにうるさい班長を一蹴してくれたこともあったし、いいところもあるのではないかと思うが。

 こういう派手な人と我々、図書室で静かに本を読んだり、美術部で絵を描いたりしたい人々とはどうも合わない。