もうやだ。
私なんか、いる必要なんてない。
もう、生きる理由なんて、ない。
このまま、死んじゃいたい。
ーそう、思ってた。あなたに会うまでは。ー
「おはよう!」
「おっはよー!」
「おはー!」
…はぁ。私に挨拶してくれる人なんて、いないよね。私なんか地味で地味で仕方ない女子中学生だもん。私なんかと関わってたら、地味が移っちゃうよね。私のことなんか、みんな、覚えてないんだろうな。
「ねぇねぇ!見た?今月の二コラ!」
「見た見た~!まじさ、表紙のモデルさんめためたかわいかった!」
「え、それな!コハナちゃん越えかも!」
朝から元気だな。私も、前まではあそこにいたのに。
私は、中学入ってすぐはいっぱい友達がいた。小学校までみたいに、「地味な私」になりたくなかったから、自分からいろんな人に話しかけた。ずっと笑顔でいた。なのに。
「姫奈ってさぁあれだよね。ずっと笑顔だよね。」
「八方美人的なね?笑笑」
「姫奈はうちらの話に興味なさそーだよね」
「それな?」
(え、、。私は、ただ笑顔でいただけなのに。なんでそんなこと言われないといけないの。)
私は、どうやっても地味になってしまうんだ。だから、もうあきらめた。ついこないだまで頑張ってた笑顔も、全部。生きる意味なんて、ないんだ。
「はいみなさんおはよー。」
「「おはようございます!」」
「あのね、文化祭実行委員を決めたいんだけど、やりたい人とかいる?」
私の学校には、めっちゃ楽しい文化祭がある。だから、文化祭実行委員なんて、みんなやりたいに決まって、、、
「やっぱりいないかぁ。あの噂、聞いちゃったのね、」
「そーだよ!文化祭実行委員は文化祭当日全然回れないって、、、」
「そんなの嫌に決まってるっ!」
「まぁそーだよねぇ、、、ってことでくじで決めますっ!」
「「えぇえぇぇぇぇぇ」」
「うちくじ運ないんだけど!?」
「同じく。」
「やばい死んだ」
回れないのは、いやだなぁ、、、ま、っていっても回る友達がいないからいいんだけどね。といっても、文化祭実行委員は文化祭までクラスのまとめ役として頑張んなきゃいけないから、私は絶対やりたくない。わたしの言うことなんて、誰も聞いてくれないから。なりませんように、、、。
「はい決まりましたー。今年の文化祭実行委員は、、、
花実姫奈さんと湯浅海さんです!」
よりにもよって、文化祭実行委員になるなんて、、、しかも、湯浅くんって、超一軍男子で、私が昔からんでた女子グループと仲いい男子やん、、、終わったぁ
「かーい!どんまい笑笑」
「おつかれさまでーす」
「ごしゅーしょーさま」
「文化祭実行委員になること自体いやなのに、よりにもよって花実と一緒だなんて、、、」
やっぱり、そうだよね。私と一緒なんて、やだよね。
「ってことで、さっそく花実さんと湯浅くんは今日の放課後委員会あるから、ちゃんと行ってねー!」
え、うそでしょ、、、、さっそく湯浅君と一緒に行動すんの!?精神的に死ぬ気しかしない、、、、
「海~!かーえろっ!」
優里奈だ。優里奈は私が昔仲良くしていた女子の一人。優里奈は海のことが好きだと思う。だって、めっちゃアタックすごいもん。
てか、今日文化祭実行委員あるから、だめなんだけど、、。まぁ、湯浅くんのことだから、私に任せるんだろうな。はぁ。
「ごめん今日は無理。」
「なんでぇ!?」
「今日は文化祭実行委員あるから。」
「あんなのあいつに任せればいいじゃん。」
やば。目合った。気まず。
「そんな任せられるわけないだろ。俺も立候補してなったわけじゃないからやりたくないけど、花実だってやりたくてやってるわけじゃないんだから、そんなの人任せにするのはないだろ。」
「あ、え、うん、そ、そうだね。」
え、、。湯浅君って、こんな人だったんだ。優しいんだ。いい人だな。
って!?湯浅君がこっち向かてくる!?
「花実。」
「ひゃいっ!」
「なにビビってんだよ。早くいくぞ。委員会。」
「あ、うん。」
湯浅君、ほんと優しいな。委員会ある場所まで一人で行けばいいのに、わざわざ私のとこまで来て誘ってくれるなんて、やさしい。
「おい、調子乗んなよ。海は優しいから構ってくれてるだけだからな。」
優里奈に、ぼそっとそうつぶやかれた。
知ってるよ。っていうか、私みたいな地味女子が、こんな明るくてイケメンで、頭もよくて、スポーツもできるっていう完璧王子を好きになるわけないじゃん。
普通に釣り合わなすぎる。
「では、各自話し合いをしてきてくださいね。これで今日の委員会を終わります。ありがとうございました。」
はぁぁぁぁぁやっとおわったぁっ!
「花実。」
「ん?」
「クラスの話し合いは、明日でいいよな。」
「うん!」
「じゃあ、担任に言ってくる。」
「え、いいの!?ありがとう!」
「いやこれくらいいよ。じゃ。」
「ほんとにありがとね。ばいばい。」
湯浅くん、ほんとに優しいな。陽キャでも、こんな優しくて、いい人いるんだな。
それから、私たちのクラスは、カフェをやることに決まった。それも、メイドカフェだ。
女子は普通にメイド服を着て、男子は中で働く人。ほとんどの男子は、女子のメイド服を見るためにそれに投票したっぽい。
しょうじき、私は何でもよかったのだが、カフェだけはなってほしくなかった。なぜなら、一番大変だからだ。予算も結構考えないといけないし、、。はぁ。もう、めんどくさいな。
、、、でも、湯浅君と会えるのは、うれしい、かも
「花実!!」
「ん?」
「今日も委員会あるらしよ。」
「そうなの!?ありがとう教えてくれて。」
「いいよ。早く行こ。」
やっぱ、優しいな。文化祭実行委員になってよかった。
「今日の議題はね、カフェの内装と役割分担を決めることです。」
委員長の先生がそう言った瞬間、周りの空気が少しピリッとする。
カフェって、やることめっちゃ多いんだよね…。
「花実、予算のとこ、一緒に見ね?」
「え、いいの?」
「お前ひとりじゃ大変だろ。俺、数字見るの得意だし。」
「…うん。ありがとう。」
机をくっつけて、一緒にプリントをのぞき込む。
わ、近い…近い…!
心臓の音が、ちょっとやばい。
「ここ、飲み物の材料費が多すぎるかも。」
「あ、たしかに…これなら少し減らせるかも…。」
「だろ?ほら、こうやって書けばいい。」
湯浅くんの指先が、私の手のすぐそばに触れそうで…触れなくて。
でも、それだけで十分だった。
なんでだろう。
最初はただ怖かったのに。
今は、そばにいられるだけで嬉しいって思ってる。
「花実ってさ。」
「え、な、なに?」
「そうやって真剣な顔してるときのほうがいいよ。」
「……………え?」
「普段は元気ないじゃん。だから、ちょっと安心する。」
「え…あ、そ、そう…なんだ…?」
顔、熱すぎて死ぬかと思った。
そんなこと、言われるなんて思ってなかったし。
「お、終わったなら、そろそろ帰りのSHR行くぞ。」
「あ、うん…!」
委員会室を出るとき、ふっと肩が軽くなった気がした。
湯浅くんと話すの、やっぱり嫌じゃない。
むしろ、少しだけ―――
生きていたいと思った。
廊下に出ると、優里奈がこっちを見ていた。
…あ、絶対なんか言われるやつだ。
「姫奈。」
「な、なに?」
「調子乗るなよ。」
短く、冷たい声。
でも、そのあとすぐ。
「海はさ、誰にでも優しいんだから。勘違いすんな。」
「……してないよ。」
本当に…してない。
してないけど。
(だけど、湯浅くんの言葉で胸が苦しくなるのは、どうしてなんだろう。)
教室に戻る途中、湯浅くんが小さく呼んだ。
「花実。」
「ん?」
「……今日さ、頑張ってたな。」
「え?」
「なんか…よかったよ。」
それだけ言って、スタスタ歩いて行ってしまう。
ずるいよ、そんなの。
そんな言い方したら、期待しちゃうじゃん…。
でも。
今日初めて、私は自分に対して
「生きる意味が、少しくらいあるのかもしれない」
そう思えた。
すべては―――あなたに、会えたから。
<海SIDE>
俺は、いつもあいつのことを見てた。
あいつは、俺と一緒で、何かを隠してる気がしてたからだ。
花咲たちからはぶられてから、隠していたものをさらしていた。
あいつー花実は、いっつも笑顔でいたが、ほんとは、無理して笑っていただけだった。おそらく、元は目立たない女子だったが、中学生になったから、キラキラしたいと思ったのだろう。
俺と、一緒だ。
俺は完璧男子、、、と偽っている。
だが、、、
「ただいま。」
「おかえりなさい、海ちゃん。」
「母さん。もう帰ってたのか。」
「海ちゃん、遅くまで出歩かないで。どこに行ってたの?女の子の家?そんな女たらしだと、お父さんみたいになるわよ。」
「ちがうよ。学校の仕事。」
「あらそう。じゃあ、仕事行ってくるね。」
俺の家は、両親が離婚して、母さんだけだ。
離婚した理由は、父さんが、不倫したからだ。
だから、母さんは父さんを俺の反面教師にしてしつけている。
で、母さんは、昼はパートで働いて、夜は、水商売をしている。
こんな家、いやなんだけどな。
「海くんっておうちにおとーさんいないのぉ!?」
「かわいそう~」
「おかーさんはね、みずしょーばいやってるらしいよぉ」
「そうそう、だから、ママが海くんとは仲良くしないでって言ってたぁ」
「あ、海君が来た~早く逃げなきゃっ」
「キャハハっ」
こうして、俺の周りからはどんどん人が消えていった。確かに、親の関係で仲良くしほしくないって思うのはわかるが、当時の俺は、なんで逃げていくのかがわからなかった。俺は何もしてないのに。
「おいお前らっ!何言ってくれてるんだよっ」
「キャァァァァァ海君が、大輔君を殴ったぁぁぁぁぁぁ」
「うぇぇぇぇぇん」
当時の俺は、何もしてないのにみんなが逃げていくことと、自分の親を悪く言われているような気がして、耐えられなかった。だから、暴力をふるった。
そんなことをしてるから、周りから人がいなくなる。今冷静に考えてみれば、やばいやつだな、と思う。
父さんと母さんが離婚したのは、小学三年生のとき。だから、その後三年間は、まったく友達がいなかった。だから、俺は俺のことを知っている人がいない、この学校を受験した。
これで、キラキラ完璧男子になろう、と。
見事、受かって、なることができた。
、、、なのに。
「楽しくねぇ」
そう、楽しくないのだ。なぜなら、、、
「海君って好きな人いないの?」
「いないよ。」
恋をしていないから。周りの友達はみんな好きな人がいる。みんなその話で盛り上がっている。俺だけ、仲間外れみたいになる。
そんなとき、俺は、あいつに出会った。
「海~っ!一緒帰ろ?」
「わかった。」
こいつは、花咲優里奈。どうやら、俺のことが好きらしい。でも、俺はあんまこいつのことが好きじゃない。こいつは、だいぶぶりっ子だし、裏がありそうだからだ。
「ねぇ、海。相談したいことあるんだけどいい~?」
「いいよ。」
「あのね、うちの友達の姫奈がさ、まじでやばいやつなんだよね。うちらの話なんかまったく聞いてないの。ずっと笑顔でいるだけなんだよ?」
「笑顔でいるのはいいことじゃん。」
「いや、うちらが名に話してもずっと笑顔でいるんだよ?てかあいつの笑顔、普通にキモイ。」
ほら、裏があった。だから、嫌いだった。
姫奈、、、花咲、か。もしかして、あいつも偽ってる、、?
あいつも小学校の時、なんかあったのか?
そうして俺は花咲を観察することにした。
花咲はやっぱり、小学生の時になんかあったっぽくて、偽りの笑顔だった。
俺は、そんな花咲が気になり始めた。
それから、もっと観察していくと、本を読んでるときにたまに見せる笑顔や、勉強が分からないときに見せる困り顔を見るようになった。
そんな部分もあるのか、と気づいて、俺はかわいいな、と思った。
そして、好きだな、と思った。
俺は人生初の恋だから、正直何をすればいいのかわからない。だが、まずは花咲に認知してもらわなければ、と思った。だから、文化祭実行委員は奇跡だった。
(あの花咲としゃべれるなんて、神すぎだろ、、)
「湯浅君?湯浅くーん!!」
「あっおう。なんだ?」
「もう学校閉まる時間なんだけど、、、」
くっ!俺はまあまあ身長が高いほうだから、花咲が俺のほうを見ると、上目遣いみたいになる。それが、超かわいすぎる。
「あっ!えっと、文化祭のやつ、続きどうしよっか。明日やる?」
「でも、明日の朝が期限だから、今日までにやっちゃいたいな、、。」
「そ、そーだよな。あ、じゃあ、俺の家でやる?」
「、、、。」
はっ!俺は何をやってるんだ!仲良くもない男子の家なんて、やだよな、、、。バカすぎる。はぁ、嫌われた、
「あ、花咲、いやなら、、、」
「い、行く。いいなら。」
「いいの!?全然大丈夫です、、。」
やばいやばいやばい
好きな子と同じ部屋にいるとか精神的にやばいんだが?
隣にいる花咲がかわいすぎる、、、。
「は、花咲!飲み物とってくるね。」
「え、そんなのいいのに、、、。」
「いやいや、来てもらったんだし。」
はぁっ。俺はあんな可愛い花咲と一緒にいて耐えられるのか、、、?
てか、花咲かわいすぎないか?いっつも思ってたけど、、、。
「花咲ー!持ってきたぞーって!?ね、寝てる!?」
寝ちゃったのか。まぁ、学校帰りで疲れてたんだろうな。急に連れてきて申し訳ないな。
てか。
「花咲、寝顔もかわいいな、、、。花咲、好きだよ。って、何言ってんだろ俺。花咲が起きてるわけでもないのに告白なんかして。花咲に好きってことを伝えれたらな、、、。」
まぁ、とりあえず、起きるまで待つか。
<姫奈SIDE>
(へ!?へ!?ゆ、湯浅くんは私のことが好きなの!?やば、、、。)
てことは、私と湯浅君、両想いってこと?
私は何回も湯浅君と関わっていって、湯浅君のやさしさに気づいて、好きになった。
、、そ、そんな湯浅君と両思いだなんて、、、。
うれしすぎる。
て、てか起きなきゃ。
「湯浅君。ごめんね寝ちゃって。」
「全然大丈夫だよ。」
「じゃ、決めよっか。」
文化祭についていろいろ決まったので、今日のところはとりあえず解散ということになった。
「花咲。送る。」
「いや、いいよ!」
「いや、もう暗いから、女の子一人で歩かせるのはまずい。」
「じゃ、じゃあお願いしようかな。」
やっぱり、優しいな。
よしっ!せっかく両想いって気づいたんだから、告白するっ!
私は勇気だけはあるから!ちゃんと告っちゃお。
「「あのさっ」」
「い、いいよ先!」
「いや、先いいよ。」
「うち後ででいいから!」
「わかった。あのさ、花咲。俺、花咲のこと、好き。」
「っへ!?」
「ごめん、急で驚くよな。」
「い、いや、今私も告白しようと思ってたから。」
「えっ!?、ってことは俺ら両想いってこと!?」
「う、うん。」
「付き合う?」
「うん////よろしくお願いします。」
こうして、私たちは晴れてカップルとなった。
私なんか、いる必要なんてない。
もう、生きる理由なんて、ない。
このまま、死んじゃいたい。
ーそう、思ってた。あなたに会うまでは。ー
「おはよう!」
「おっはよー!」
「おはー!」
…はぁ。私に挨拶してくれる人なんて、いないよね。私なんか地味で地味で仕方ない女子中学生だもん。私なんかと関わってたら、地味が移っちゃうよね。私のことなんか、みんな、覚えてないんだろうな。
「ねぇねぇ!見た?今月の二コラ!」
「見た見た~!まじさ、表紙のモデルさんめためたかわいかった!」
「え、それな!コハナちゃん越えかも!」
朝から元気だな。私も、前まではあそこにいたのに。
私は、中学入ってすぐはいっぱい友達がいた。小学校までみたいに、「地味な私」になりたくなかったから、自分からいろんな人に話しかけた。ずっと笑顔でいた。なのに。
「姫奈ってさぁあれだよね。ずっと笑顔だよね。」
「八方美人的なね?笑笑」
「姫奈はうちらの話に興味なさそーだよね」
「それな?」
(え、、。私は、ただ笑顔でいただけなのに。なんでそんなこと言われないといけないの。)
私は、どうやっても地味になってしまうんだ。だから、もうあきらめた。ついこないだまで頑張ってた笑顔も、全部。生きる意味なんて、ないんだ。
「はいみなさんおはよー。」
「「おはようございます!」」
「あのね、文化祭実行委員を決めたいんだけど、やりたい人とかいる?」
私の学校には、めっちゃ楽しい文化祭がある。だから、文化祭実行委員なんて、みんなやりたいに決まって、、、
「やっぱりいないかぁ。あの噂、聞いちゃったのね、」
「そーだよ!文化祭実行委員は文化祭当日全然回れないって、、、」
「そんなの嫌に決まってるっ!」
「まぁそーだよねぇ、、、ってことでくじで決めますっ!」
「「えぇえぇぇぇぇぇ」」
「うちくじ運ないんだけど!?」
「同じく。」
「やばい死んだ」
回れないのは、いやだなぁ、、、ま、っていっても回る友達がいないからいいんだけどね。といっても、文化祭実行委員は文化祭までクラスのまとめ役として頑張んなきゃいけないから、私は絶対やりたくない。わたしの言うことなんて、誰も聞いてくれないから。なりませんように、、、。
「はい決まりましたー。今年の文化祭実行委員は、、、
花実姫奈さんと湯浅海さんです!」
よりにもよって、文化祭実行委員になるなんて、、、しかも、湯浅くんって、超一軍男子で、私が昔からんでた女子グループと仲いい男子やん、、、終わったぁ
「かーい!どんまい笑笑」
「おつかれさまでーす」
「ごしゅーしょーさま」
「文化祭実行委員になること自体いやなのに、よりにもよって花実と一緒だなんて、、、」
やっぱり、そうだよね。私と一緒なんて、やだよね。
「ってことで、さっそく花実さんと湯浅くんは今日の放課後委員会あるから、ちゃんと行ってねー!」
え、うそでしょ、、、、さっそく湯浅君と一緒に行動すんの!?精神的に死ぬ気しかしない、、、、
「海~!かーえろっ!」
優里奈だ。優里奈は私が昔仲良くしていた女子の一人。優里奈は海のことが好きだと思う。だって、めっちゃアタックすごいもん。
てか、今日文化祭実行委員あるから、だめなんだけど、、。まぁ、湯浅くんのことだから、私に任せるんだろうな。はぁ。
「ごめん今日は無理。」
「なんでぇ!?」
「今日は文化祭実行委員あるから。」
「あんなのあいつに任せればいいじゃん。」
やば。目合った。気まず。
「そんな任せられるわけないだろ。俺も立候補してなったわけじゃないからやりたくないけど、花実だってやりたくてやってるわけじゃないんだから、そんなの人任せにするのはないだろ。」
「あ、え、うん、そ、そうだね。」
え、、。湯浅君って、こんな人だったんだ。優しいんだ。いい人だな。
って!?湯浅君がこっち向かてくる!?
「花実。」
「ひゃいっ!」
「なにビビってんだよ。早くいくぞ。委員会。」
「あ、うん。」
湯浅君、ほんと優しいな。委員会ある場所まで一人で行けばいいのに、わざわざ私のとこまで来て誘ってくれるなんて、やさしい。
「おい、調子乗んなよ。海は優しいから構ってくれてるだけだからな。」
優里奈に、ぼそっとそうつぶやかれた。
知ってるよ。っていうか、私みたいな地味女子が、こんな明るくてイケメンで、頭もよくて、スポーツもできるっていう完璧王子を好きになるわけないじゃん。
普通に釣り合わなすぎる。
「では、各自話し合いをしてきてくださいね。これで今日の委員会を終わります。ありがとうございました。」
はぁぁぁぁぁやっとおわったぁっ!
「花実。」
「ん?」
「クラスの話し合いは、明日でいいよな。」
「うん!」
「じゃあ、担任に言ってくる。」
「え、いいの!?ありがとう!」
「いやこれくらいいよ。じゃ。」
「ほんとにありがとね。ばいばい。」
湯浅くん、ほんとに優しいな。陽キャでも、こんな優しくて、いい人いるんだな。
それから、私たちのクラスは、カフェをやることに決まった。それも、メイドカフェだ。
女子は普通にメイド服を着て、男子は中で働く人。ほとんどの男子は、女子のメイド服を見るためにそれに投票したっぽい。
しょうじき、私は何でもよかったのだが、カフェだけはなってほしくなかった。なぜなら、一番大変だからだ。予算も結構考えないといけないし、、。はぁ。もう、めんどくさいな。
、、、でも、湯浅君と会えるのは、うれしい、かも
「花実!!」
「ん?」
「今日も委員会あるらしよ。」
「そうなの!?ありがとう教えてくれて。」
「いいよ。早く行こ。」
やっぱ、優しいな。文化祭実行委員になってよかった。
「今日の議題はね、カフェの内装と役割分担を決めることです。」
委員長の先生がそう言った瞬間、周りの空気が少しピリッとする。
カフェって、やることめっちゃ多いんだよね…。
「花実、予算のとこ、一緒に見ね?」
「え、いいの?」
「お前ひとりじゃ大変だろ。俺、数字見るの得意だし。」
「…うん。ありがとう。」
机をくっつけて、一緒にプリントをのぞき込む。
わ、近い…近い…!
心臓の音が、ちょっとやばい。
「ここ、飲み物の材料費が多すぎるかも。」
「あ、たしかに…これなら少し減らせるかも…。」
「だろ?ほら、こうやって書けばいい。」
湯浅くんの指先が、私の手のすぐそばに触れそうで…触れなくて。
でも、それだけで十分だった。
なんでだろう。
最初はただ怖かったのに。
今は、そばにいられるだけで嬉しいって思ってる。
「花実ってさ。」
「え、な、なに?」
「そうやって真剣な顔してるときのほうがいいよ。」
「……………え?」
「普段は元気ないじゃん。だから、ちょっと安心する。」
「え…あ、そ、そう…なんだ…?」
顔、熱すぎて死ぬかと思った。
そんなこと、言われるなんて思ってなかったし。
「お、終わったなら、そろそろ帰りのSHR行くぞ。」
「あ、うん…!」
委員会室を出るとき、ふっと肩が軽くなった気がした。
湯浅くんと話すの、やっぱり嫌じゃない。
むしろ、少しだけ―――
生きていたいと思った。
廊下に出ると、優里奈がこっちを見ていた。
…あ、絶対なんか言われるやつだ。
「姫奈。」
「な、なに?」
「調子乗るなよ。」
短く、冷たい声。
でも、そのあとすぐ。
「海はさ、誰にでも優しいんだから。勘違いすんな。」
「……してないよ。」
本当に…してない。
してないけど。
(だけど、湯浅くんの言葉で胸が苦しくなるのは、どうしてなんだろう。)
教室に戻る途中、湯浅くんが小さく呼んだ。
「花実。」
「ん?」
「……今日さ、頑張ってたな。」
「え?」
「なんか…よかったよ。」
それだけ言って、スタスタ歩いて行ってしまう。
ずるいよ、そんなの。
そんな言い方したら、期待しちゃうじゃん…。
でも。
今日初めて、私は自分に対して
「生きる意味が、少しくらいあるのかもしれない」
そう思えた。
すべては―――あなたに、会えたから。
<海SIDE>
俺は、いつもあいつのことを見てた。
あいつは、俺と一緒で、何かを隠してる気がしてたからだ。
花咲たちからはぶられてから、隠していたものをさらしていた。
あいつー花実は、いっつも笑顔でいたが、ほんとは、無理して笑っていただけだった。おそらく、元は目立たない女子だったが、中学生になったから、キラキラしたいと思ったのだろう。
俺と、一緒だ。
俺は完璧男子、、、と偽っている。
だが、、、
「ただいま。」
「おかえりなさい、海ちゃん。」
「母さん。もう帰ってたのか。」
「海ちゃん、遅くまで出歩かないで。どこに行ってたの?女の子の家?そんな女たらしだと、お父さんみたいになるわよ。」
「ちがうよ。学校の仕事。」
「あらそう。じゃあ、仕事行ってくるね。」
俺の家は、両親が離婚して、母さんだけだ。
離婚した理由は、父さんが、不倫したからだ。
だから、母さんは父さんを俺の反面教師にしてしつけている。
で、母さんは、昼はパートで働いて、夜は、水商売をしている。
こんな家、いやなんだけどな。
「海くんっておうちにおとーさんいないのぉ!?」
「かわいそう~」
「おかーさんはね、みずしょーばいやってるらしいよぉ」
「そうそう、だから、ママが海くんとは仲良くしないでって言ってたぁ」
「あ、海君が来た~早く逃げなきゃっ」
「キャハハっ」
こうして、俺の周りからはどんどん人が消えていった。確かに、親の関係で仲良くしほしくないって思うのはわかるが、当時の俺は、なんで逃げていくのかがわからなかった。俺は何もしてないのに。
「おいお前らっ!何言ってくれてるんだよっ」
「キャァァァァァ海君が、大輔君を殴ったぁぁぁぁぁぁ」
「うぇぇぇぇぇん」
当時の俺は、何もしてないのにみんなが逃げていくことと、自分の親を悪く言われているような気がして、耐えられなかった。だから、暴力をふるった。
そんなことをしてるから、周りから人がいなくなる。今冷静に考えてみれば、やばいやつだな、と思う。
父さんと母さんが離婚したのは、小学三年生のとき。だから、その後三年間は、まったく友達がいなかった。だから、俺は俺のことを知っている人がいない、この学校を受験した。
これで、キラキラ完璧男子になろう、と。
見事、受かって、なることができた。
、、、なのに。
「楽しくねぇ」
そう、楽しくないのだ。なぜなら、、、
「海君って好きな人いないの?」
「いないよ。」
恋をしていないから。周りの友達はみんな好きな人がいる。みんなその話で盛り上がっている。俺だけ、仲間外れみたいになる。
そんなとき、俺は、あいつに出会った。
「海~っ!一緒帰ろ?」
「わかった。」
こいつは、花咲優里奈。どうやら、俺のことが好きらしい。でも、俺はあんまこいつのことが好きじゃない。こいつは、だいぶぶりっ子だし、裏がありそうだからだ。
「ねぇ、海。相談したいことあるんだけどいい~?」
「いいよ。」
「あのね、うちの友達の姫奈がさ、まじでやばいやつなんだよね。うちらの話なんかまったく聞いてないの。ずっと笑顔でいるだけなんだよ?」
「笑顔でいるのはいいことじゃん。」
「いや、うちらが名に話してもずっと笑顔でいるんだよ?てかあいつの笑顔、普通にキモイ。」
ほら、裏があった。だから、嫌いだった。
姫奈、、、花咲、か。もしかして、あいつも偽ってる、、?
あいつも小学校の時、なんかあったのか?
そうして俺は花咲を観察することにした。
花咲はやっぱり、小学生の時になんかあったっぽくて、偽りの笑顔だった。
俺は、そんな花咲が気になり始めた。
それから、もっと観察していくと、本を読んでるときにたまに見せる笑顔や、勉強が分からないときに見せる困り顔を見るようになった。
そんな部分もあるのか、と気づいて、俺はかわいいな、と思った。
そして、好きだな、と思った。
俺は人生初の恋だから、正直何をすればいいのかわからない。だが、まずは花咲に認知してもらわなければ、と思った。だから、文化祭実行委員は奇跡だった。
(あの花咲としゃべれるなんて、神すぎだろ、、)
「湯浅君?湯浅くーん!!」
「あっおう。なんだ?」
「もう学校閉まる時間なんだけど、、、」
くっ!俺はまあまあ身長が高いほうだから、花咲が俺のほうを見ると、上目遣いみたいになる。それが、超かわいすぎる。
「あっ!えっと、文化祭のやつ、続きどうしよっか。明日やる?」
「でも、明日の朝が期限だから、今日までにやっちゃいたいな、、。」
「そ、そーだよな。あ、じゃあ、俺の家でやる?」
「、、、。」
はっ!俺は何をやってるんだ!仲良くもない男子の家なんて、やだよな、、、。バカすぎる。はぁ、嫌われた、
「あ、花咲、いやなら、、、」
「い、行く。いいなら。」
「いいの!?全然大丈夫です、、。」
やばいやばいやばい
好きな子と同じ部屋にいるとか精神的にやばいんだが?
隣にいる花咲がかわいすぎる、、、。
「は、花咲!飲み物とってくるね。」
「え、そんなのいいのに、、、。」
「いやいや、来てもらったんだし。」
はぁっ。俺はあんな可愛い花咲と一緒にいて耐えられるのか、、、?
てか、花咲かわいすぎないか?いっつも思ってたけど、、、。
「花咲ー!持ってきたぞーって!?ね、寝てる!?」
寝ちゃったのか。まぁ、学校帰りで疲れてたんだろうな。急に連れてきて申し訳ないな。
てか。
「花咲、寝顔もかわいいな、、、。花咲、好きだよ。って、何言ってんだろ俺。花咲が起きてるわけでもないのに告白なんかして。花咲に好きってことを伝えれたらな、、、。」
まぁ、とりあえず、起きるまで待つか。
<姫奈SIDE>
(へ!?へ!?ゆ、湯浅くんは私のことが好きなの!?やば、、、。)
てことは、私と湯浅君、両想いってこと?
私は何回も湯浅君と関わっていって、湯浅君のやさしさに気づいて、好きになった。
、、そ、そんな湯浅君と両思いだなんて、、、。
うれしすぎる。
て、てか起きなきゃ。
「湯浅君。ごめんね寝ちゃって。」
「全然大丈夫だよ。」
「じゃ、決めよっか。」
文化祭についていろいろ決まったので、今日のところはとりあえず解散ということになった。
「花咲。送る。」
「いや、いいよ!」
「いや、もう暗いから、女の子一人で歩かせるのはまずい。」
「じゃ、じゃあお願いしようかな。」
やっぱり、優しいな。
よしっ!せっかく両想いって気づいたんだから、告白するっ!
私は勇気だけはあるから!ちゃんと告っちゃお。
「「あのさっ」」
「い、いいよ先!」
「いや、先いいよ。」
「うち後ででいいから!」
「わかった。あのさ、花咲。俺、花咲のこと、好き。」
「っへ!?」
「ごめん、急で驚くよな。」
「い、いや、今私も告白しようと思ってたから。」
「えっ!?、ってことは俺ら両想いってこと!?」
「う、うん。」
「付き合う?」
「うん////よろしくお願いします。」
こうして、私たちは晴れてカップルとなった。


