掴みどころのない人だ。
非の打ちどころのない経歴と実績と持ち主でありながら、不遜さはない。
いわゆる上から目線の物言いをするでもなく、下心も見当たらず。
上でも下でもないフラットさで接してくるのだ。
相手が誰であれ公正であろうと心がけているのだろうか。二階堂聡のその殊勝さはどこから来ているのだろうと、ちらと思う。
「話しこんじゃいましたね」
腕時計に視線を落として聡がぼそりと言う。
そろそろ出ましょうかと、その言葉をしおに席を立った。
明日美は会社に荷物を取りに戻って、今日はもう切り上げることにしたが、聡はまた仕事に戻るという。
涼しい顔をしながら、こちらには想像もつかない重責を背負っているのだろう。
本来交わることのない二本の線が、いっとき重なった。それだけのことだ。
その夜はそう思っていた。
非の打ちどころのない経歴と実績と持ち主でありながら、不遜さはない。
いわゆる上から目線の物言いをするでもなく、下心も見当たらず。
上でも下でもないフラットさで接してくるのだ。
相手が誰であれ公正であろうと心がけているのだろうか。二階堂聡のその殊勝さはどこから来ているのだろうと、ちらと思う。
「話しこんじゃいましたね」
腕時計に視線を落として聡がぼそりと言う。
そろそろ出ましょうかと、その言葉をしおに席を立った。
明日美は会社に荷物を取りに戻って、今日はもう切り上げることにしたが、聡はまた仕事に戻るという。
涼しい顔をしながら、こちらには想像もつかない重責を背負っているのだろう。
本来交わることのない二本の線が、いっとき重なった。それだけのことだ。
その夜はそう思っていた。


![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)
![he said , she said[1話のみ]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1740766-thumb.jpg?t=20250404023546)