「え、今日ってこんなに涼しかったっけ……?」

いつもなら、もわっとした熱気に包まれるはずなのに。
涼しくて嬉しいけど、なんとなく違和感を覚えながら、周囲を見渡すと——

「……ない……」

目の前にあったはずの新築マンションが、消えていた。
その代わりに、昭和っぽいスーパーがあって、何か変な感じのする買い物客で賑わっていた。

「えっ……えぇ……スーパーだったっけ……?」

混乱していると、背後から声がした。

「……君も来られたんだな」

「——透くんっ!」



「……あ、名前、いきなり呼ぶんだ」

「えっ!? あっ、い、いまのは、反射的っていうか、ちがっ……!」

「いいよ。もう名前で呼ぶほうが慣れてるみたいだし、今さら《《蒼木くん》》とか《《あなた》》って言われても落ち着かない」

「え、そ、そう? じゃあ……じゃあ、透くんって、呼んでいいの?」

「いいよ。じゃあ俺も……凛花で」

「ふぇっ!? う、うん……!」

なんか、名前呼び、成立しちゃった。
でも悪くない。……ちょっと、じゃなくて――すごく嬉しい!

そんなふうに心がふわっとなった直後、非現実が戻ってくる。