水色に混ざる夏

かき氷を食べ終わって、2025年に戻ると、透くんの姿だけが、そこにはなかった。

「……え?」

わたしの声が、やけに大きく響いた気がした。

隣に、透くんはいない。
さっきまで、かき氷を食べて、笑っていたはずなのに。
たしかに、手を伸ばせば届く距離に……

「……透くん……?」

呼んでも、生暖かい風が返事をするだけだった。

中庭の空気が、もう1995年のような涼しさではなかった。肌にまとわりつくような、2025年の焼け付く暑さ。

ここがもう、特別な場所ではなくなってしまったことを、わたしは感じた。

「もう一度……もう一度かき氷を食べれば――!」

あっちに戻ろうと、かき氷のメニューが掛かっていた木陰を見ても、何もなかった。
座っていたベンチは朽ちかけていて、お店には誰も居ないし、駄菓子も並んでいない。

「……ここ、もう……違うんだ……」

涼しくて、不思議で、夢みたいだったあの空気が、どこにもない。

「……透くん、もう……会えないの?」
「あれで最後だったのに……わたし、何も言えなかった……」

わたしはひとりベンチに座って、まとわりつく熱気も気にせず、呆然としていた。