「……やっぱり来たんだな」

中庭のいつものベンチに、透くんがいた。

「透くん……!」

嬉しさと驚きと、胸いっぱいの想いがこみ上げてくる。

言い出すのが少し恥ずかしくて、何度も口を開きかけては閉じる。それでも、やっとの思いで言葉を紡いだ。

「ねえ、お願いがあるの。わたし、透くんと行ってみたい場所があるの」

凛とした声でそう伝えながらも、心はどきどきしていた。

「……ひみさきサンランド。小さい頃によく家族で行った遊園地。でも今はもう閉園しちゃってて、行けないんだ」

「95年なら、あるはずだから……」

そう言って、わたしは無意識に透くんをまっすぐ見つめていた。

しばらく沈黙が流れたあと、透くんは静かにうなずいた。

「……わかった。行こう、遊園地」

透くんは真剣に答えてくれた。わたしの気持ちを、ちゃんと受け取ってくれたんだって思ったら、胸がいっぱいになった。

……それで、気づいた。

ずっと、透くんのことを見つめていたことに。

「……わっ、ごめん。わたし、ずっと見てたかも……」

言ってから、自分で顔が熱くなるのがわかる。
でも透くんは、少しだけ微笑んで言った。

「……それで、伝わったよ。凛花にとって、大切なことなんだって」

その言葉を聞いたとたん、気持ちがあふれそうになった。
わたしは、ただうなずいた。
そうして、最後のタイムリープが始まった。