このまま、ほんとに二度と来られなくなっちゃうのかな……
透くんとわたしの《《共通点》》がなくなっちゃう……
不安がふと胸をかすめて、わたしは、前に撮った写真を確かめてみたくなった。

「そういえば、前にこのお店の写真、こっそり撮ったんだけど……」

「……知ってたよ。凛花たまに、ちょっと不自然な動きしてたから」

「えっ!? 気づいてたの……? なんで言わなかったの?」

驚いてそう聞くと、透くんは少しだけ目を細めて、優しく微笑んだ。

「誰にも見られなければ問題ないし、凛花らしいなって思ってただけ」

その言い方に、ちょっと恥ずかしさを感じながらも、わたしは答えた。

「え、う、うん、ありがとう……どうしても思い出に残したいときは、つい……」

わたしは少し慌てながら、フォトアプリを開いて思い出の写真を探した。
だけど――

「……え?」

撮ったはずの写真が、いくつか消えてる。
駄菓子屋の写真だけが、ぽっかりと抜け落ちるように……。

「……他のはあるのに、なんで……」

「ここは複数の時空が重なり合ってる場所なのかもな。――そんな場所の、記録は残せないのかもしれない」

深刻そうな表情をしていた透くんが、急にクスッと笑ったかと思うと、声のトーンも明るくなって話し始めた。

「写真撮ってたの、凛花らしくて良いよな」

「だって……どうしても思い出に残したかったんだもん」

「そうだよな――大切な思い出……だからな」

今までに見たことのない、言葉にできない何かを込めたような、透くんのぎこちない笑顔から、言葉が溢れたように感じた。

――透くんも、大切な思い出だって、思ってくれてるんだ。

その表情を見て、言葉を聞いて、わたしの胸は息ができないくらい、きゅっとなった。
透くんは、わたしをちゃんと見てくれてる……。
どうして、そんなに見ていてくれるの? ぎこちない笑顔で、なにを隠したの……?

こんなに気持ちが重なったと思えるのに、夏の思い出はこれで終わりって思うと——
どうしようもなく切なくなった。
この楽しかった夏が、遠ざかっていってしまう。

「……今回で最後、かあ……」

そうつぶやくと、透くんは冗談めかして言った。

「夏祭りに行けなくなるって言ったけど、隣町なら25年でもやってるからさ」

「……うん!そうだよね!」

まだ言えなかった。
ほんとは透くんと行きたい場所——もうひとつ、あるんだ。

言い出せなかった思いが、もう来られないかもしれないと思うと急に大きくなっていく。
言ったら困らせるかもしれない、でも言わなきゃこの夏が終わってしまう——そんな気がして、心の中だけで何度も口を開いた。