その時、透くんがはっと何かに気がついたみたいに、つぶやいた。

「……変だな」

「え?なにが変なの?」

「95年と25年で、おばちゃんの姿が変わっている気がしない。30年も経てば誰でも変化するはず……」

「あっ!そういえば……」

わたしもスルーしていた違和感に気が付いた。こっちに来て知った今はなくなった駄菓子が、どっちでもふつうに並んでたこと。

中庭のかき氷機にセットされてる氷が、あんなに外にあるのに、いつ見ても溶けていないこと——

「ねえ透くん、このお店ってさ……なんかちょっと変?なのかも?」

「……何か普通じゃないのは確かだ。時間を超えることで、《《なにが》》が起きる可能性があるのか、もっとよく考えるべきだった……」

「な、なにがって……?」

「例えば……とても似ている、別の世界に紛れ込んでしまうとか……」

言葉を切って、透くんは小さくうなずいた。

「——タイムリープ、今回の帰りで終わりにしよう。もう来ないほうがいい」

「えっ……」

わたしは戸惑った。まだぜんぜん、一緒に居足りないのに……もっと、こっちの世界で、思い出を作りたかったのに……。

「俺は《《どっちにも同時に》》存在しているから、行き来できなくなっても問題はない。でも凛花は、こっちに取り残されてしまったら……」

「……うん」

うなずいたけれど、胸の奥にひっかかるものは残った。透くんの居る時代なら、わたしはどっちに居てもいいよ。
それに、わたし——

(透くんと行ってみたい場所、まだあるんだよ……)

でも、その想いは口にできないまま。