爽やかな雨上がり、まだ残る雨の香りの中、駄菓子屋までの道をたどっている。
わたしたちはまだ、1995年の夏にいる。さっき図書館で聞いた、駄菓子屋が《《なくなるかも》》しれないという噂話が、頭の中をぐるぐる回っていた。

「暗くなる前に、雨上がってよかったね」

ふたりで歩いてるのに会話がないのが、なんだかもったいない気がして、わたしはぽつりと声を出した。

「うん。夏の……通り雨だな」

透くんが、空を見上げてそんな事を言ったから、わたしも同じ空を見てみる。

「あ!虹だよ!はっきり見える!」

「虹は、どの時代で見ても綺麗だね」

透くんの綺麗って言葉に、ドキッとしてしまう自分がいる。
別に自分が言われたんじゃないって、わかってるけど、透くんの口から聞く綺麗って言葉は、意識しないほうが無理。自意識過剰なのかな、わたし……。