図書館の中は、思ったより人が多かった。夏休みだからか、同年代の高校生たちが、グループで勉強したり、雑誌を広げたりしている。
わたしはキョロキョロと、すれ違う女の子たちの制服を眺めていた。形は今と同じなのに、着こなしがそれぞれ工夫されていて、今とはまったく違う雰囲気に見える。
(なんでこんなに違って見えるの……髪型のせい? アクセサリー? それともメイクのせい?)
そんなことを思いながら、わたしは思い切って透くんに話しかけた。
「ねえ、そういえばさ……この前言ってた、お母さんが昔着てた服とかって、探してみたんだ」
「覚えててくれたんだ。それで、何かあった?」
「ううん、服はなかった。でもね、ルーズソックスだけ出てきたの」
「へえ。思い出の品だったのかな?」
「うーん……たまたま引き出しの奥に紛れてただけだと思う。ふつうにしまってあっただけだし……」
本当は、着てみたくて持ってきた。だけど、それを口にする勇気は出なかった。
「それで……えっと、見せようと思って持ってきたんだけど、履いてみようかなって。さっき雨で靴下も濡れちゃったし……替えたくて」
そんな明らかな言い訳をしながら、わたしはそっと靴を脱いで、ルーズソックスに履き替えた。
膝からどのくらい下に履くのか、周囲の女子をお手本にして履く初めてのルーズソックスは……生地が厚くて、足元が重くなって――妙な安心感があって、不思議な感じがした。
(うわ……なんか、本当にこの時代の子になれたみたい!)
ちょっと照れながら、透くんの方を見上げる。
「……ど、どうかな? 似合ってる……?」
透くんは何度かまばたきをして、それから優しく笑った。
「うん。こっちの女子高生みたいに、ちゃんと似合ってるよ」
「……そ、そう? よかった〜……」
思わず、肩の力が抜ける。
似合ってるって言われてすごく嬉しい。
でも、それだけじゃない。ずっと見てた《《画面の中の憧れ》》が、今、自分の足元にある。そのこと自体が、なぜだかすごく不思議で、くすぐったくて。
ほんの少しだけ――新しい凛花になれた気がして、それが、嬉しかった。

わたしはキョロキョロと、すれ違う女の子たちの制服を眺めていた。形は今と同じなのに、着こなしがそれぞれ工夫されていて、今とはまったく違う雰囲気に見える。
(なんでこんなに違って見えるの……髪型のせい? アクセサリー? それともメイクのせい?)
そんなことを思いながら、わたしは思い切って透くんに話しかけた。
「ねえ、そういえばさ……この前言ってた、お母さんが昔着てた服とかって、探してみたんだ」
「覚えててくれたんだ。それで、何かあった?」
「ううん、服はなかった。でもね、ルーズソックスだけ出てきたの」
「へえ。思い出の品だったのかな?」
「うーん……たまたま引き出しの奥に紛れてただけだと思う。ふつうにしまってあっただけだし……」
本当は、着てみたくて持ってきた。だけど、それを口にする勇気は出なかった。
「それで……えっと、見せようと思って持ってきたんだけど、履いてみようかなって。さっき雨で靴下も濡れちゃったし……替えたくて」
そんな明らかな言い訳をしながら、わたしはそっと靴を脱いで、ルーズソックスに履き替えた。
膝からどのくらい下に履くのか、周囲の女子をお手本にして履く初めてのルーズソックスは……生地が厚くて、足元が重くなって――妙な安心感があって、不思議な感じがした。
(うわ……なんか、本当にこの時代の子になれたみたい!)
ちょっと照れながら、透くんの方を見上げる。
「……ど、どうかな? 似合ってる……?」
透くんは何度かまばたきをして、それから優しく笑った。
「うん。こっちの女子高生みたいに、ちゃんと似合ってるよ」
「……そ、そう? よかった〜……」
思わず、肩の力が抜ける。
似合ってるって言われてすごく嬉しい。
でも、それだけじゃない。ずっと見てた《《画面の中の憧れ》》が、今、自分の足元にある。そのこと自体が、なぜだかすごく不思議で、くすぐったくて。
ほんの少しだけ――新しい凛花になれた気がして、それが、嬉しかった。

