駄菓子屋から歩いてすぐにある、商店街のアーケードに足を踏み入れた瞬間、わたしは思わず息をのんだ。

色とりどりの看板、氷の旗、ザワザワと響く人の声。子どもたちの笑い声に、自転車のベル、アクセサリーの露店……どれもこれも懐かしいような、でも初めて見るような、不思議な景色だった。

「うわ……すごい、本当に賑わってるね」

「25年じゃ、信じられない光景だよな」

透くんの声が、どこか少しさみしそうに聞こえた。

わたしは周りを見回す。やっぱり気になるのは、同い年くらいの女子たち。

やたら短いスカート、くしゅっとしたルーズソックス、小さな機械をピッピと鳴らしながら、ケラケラ笑ってる。

「……本物のルーズソックス……いっぱい居る……!」

「なんだか嬉しそうだな」

「うん! 前からちょっと憧れてたんだ、あれ!」

透くんが、優しく笑ってくれる。

(今なら、言えるかもしれない。バッグの中に入れてきた《《あれ》》、見せても……)

でもタイミングを逃してしまった。あんなに準備してきたのに、自分でも可笑しいくらい、ためらってしまう。

それからわたしたちは、いろんなお店を社会科見学みたいに巡って歩いた。

赤い口紅の女性が印象的な広告、タンクトップを着たおじさんの映画ポスター、CDショップ、今とは形も色使いも違うかわいい文房具……凛花調査隊、ただいま1995年を調査中! ってくらい、色んな場所を見て回った。