「今日は、95年の商店街に行ってみないか? 今じゃすっかり寂れちゃってるけど、あっちなら賑わってて、歩いてると楽しいんだよ」

いつもの駄菓子屋の中庭。透くんの言葉に、わたしはぱっと顔を上げた。

「いいね! 歩いてみたい!」

「きっと、凛花も気に入るよ」

そのひと言で、わたしの心はふっと喜びに満ちる。

(……わたしの趣味、わかってくれてるってこと? それとも……)

なにげない言葉なのに、ちょっと特別な意味に聞こえてしまうのは、きっと夏のせい。