休憩して、また遊んで、まだまだ太陽は高いところに居る、帰り道。

「ねえ、透くん。今日の夏も楽しかったけど……でも、やっぱり向こうの夏の方が好き」

「どうして?」

「なんとなくなんだけど……空気とか、音とか、風とか……すっと馴染んでくる感じ。なんか、自然体で居られるような……」

透くんは、しばらく何も言わなかった。

やがて、何かを決心したみたいに、口を開いた。

「凛花、俺――本当は95年の人間なんだ」

「え?」

透くんの口から飛び出した言葉に、一瞬思考が止まる。

「俺は95年に生まれたんだ。でもタイムリープできるようになってからは、両方の時代を同時に生きてる。行き来してるんじゃなくて、どっちにも居るんだ」

わたしは透くんの言ってる意味が理解できなかった。ただ、その不穏な雰囲気に胸の奥がひやっとした。

「じゃあ、いつか……どっちかの時代の透くんが消えちゃうの?」

「……分からない。でも今は、こっちにいる」

わたしはその言葉に、なんだか救われる気がした。

「じゃあ、私も今はこっちにいるから」

謎も不安もある。でも、目の前にいる透くんと過ごす夏の思い出を、もっと増やしたい。

言葉にならない不安も、ぜんぶ抱えて進めばいい。
だって、透くんと一緒なら——きっと大丈夫だから。