どちらから言うということなく中庭で待ち合わせて、次の《《作戦》》を考えている。
透くんと居ても、ちょっとだけ平常心で居られるようになったわたしは――

「ねえ、今度はさ——南渚(みなみなぎさ)海岸、行ってみない?」

自然体になってたみたいで、《《深く考えず》》友達と話すみたいに、そう言った。

ハイキングも、夏祭りも、楽しかった。だけど、タイムリープの謎に関しては、正直まったくの手がかりなし。あと思いつく夏の行事と言えば――

「現代の夏で、何かヒントがあるかも……って」

夏らしいことと言えば海だって思ったのは本当。
でも、本当の本当は友だちがSNSで「ミナミナ(ミナミナぎさ)行ってきたー!」なんて楽しそうな投稿してるのを見て、羨ましくなってしまったからだった。

わたしの言葉を聞いた透くんは、少し考えてこう言った。

「条件を変えてみるのは良いね。それに、今の方が、海岸も空いてるし」

「えっ、そうなの?」

「95年の海は、夏休みに入ると人だらけなんだ。今の方が静かに過ごせる」

「へぇ……じゃあ、こっちでなにかヒント見つけようって思ってたの、案外いいアイデアだったのかな?」

そう言ったわたしに、意外にも透くんは関心して納得したような顔をした。なんか凄く良いこと、言っちゃったみたい!?

「うん、いい提案だよ」

その言葉が、妙に嬉しくて。なんだか認められたみたいで。

(……やった、褒められた)

だけど、家に帰ってきて、海に行くのには何が必要かと思ったとき……。

「……わたし、自分から誘っといて、水着になるとか――無理すぎない!?」

そんな現実が、遅れてのしかかってくる。

「水着になるなんて重大なこと、完全に忘れてた……」

でももう、引き返せなかった。せっかく褒められた提案だし、やめたくない。
それに——透くんと、海、行きたい……!

今までかき氷たくさん食べたけど、小さいからカロリー少ないし……きっと大丈夫だよね!
駄菓子もたくさん食べたけど……安いからきっとカロリーも低いよね?

悩みに悩んで、結果——

「ラッシュガードって、最強かもしれない……」

そう言いながら、わたしは地味色のラッシュガードをカバンに詰めて、ちょっとだけため息をついた。