色々まわって、ちょっと休憩してると、
少し離れた場所に行っていた透くんが、戻ってきて何かを差し出した。

「これ、凛花はこういうの好きかなって思って」

それは、小さな風鈴だった。透明なガラスに《《青と白》》の模様が描かれている。

「えっ……わたしに? これ……」

「中庭に吊るされてる風鈴、よく見てただろ? だから好きなんじゃないかって思った」

その言葉に、胸の奥がきゅっとなる。

え、そんな……わたし、そんなに見てたかな?

思い返すと、確かに風鈴の音とか、ガラスの模様とか、ぼーっと眺めてた時間はあった。でも、それを透くんが見てたなんて——しかも、ちゃんと気づいて、覚えててくれたなんて。

なんで、そんなとこまで見ててくれるの……。

「……うぅ、なんか恥ずかしいじゃん、そういうの……」

視線をそらして、恥ずかしさを隠すように風鈴を揺らしてみる。カラン、と鳴った音が、胸の鼓動といっしょに広がっていく。

その音がなんだか、優しい《《透くんの声》》みたいな感じで、耳に馴染んで、嬉しくて。

「ありがと……めっちゃ、うれしい」

嬉しくてこぼれた笑みを素直に見せるのが、なんだか恥ずかしくてうつむいた。

花火の音が、空に響いたのはその直後だった。

「――わっ!」

驚いてたじろいだわたしは、思わず透くんにぶつかってしまった。

「ご、ごめん!」

軽く肩が触れただけなのに、心臓が跳ねる。

「大丈夫……」

少しだけ距離が縮まって、でも夜の暗さに助けられて、わたしの赤くなった顔はきっと見えてない。

風に揺れて、振り合う浴衣の袖。花火が打ち上がる度に、照らされる横顔。

——なんかもう、夢みたい。

ずっと遠くにあるって思ってた景色が、今はちゃんと目の前にある。

透くんの隣に、わたしがいていいなんて。