駄菓子屋を出て駅前まで来ると、そこはもう、別世界だった。
屋台の《《きらめき》》が歩くたびに現れては消えて、夢の中に迷い込んだみたい。
夏の香りを含んだ風がふいに吹いてきて、懐かしい記憶にそっと触れていく。

わたしはしばらく、その雰囲気に浸っていたけど……気づけば、どの屋台に行こうかばかりが気になっていた。

型抜き、ヨーヨー釣り、フラッペ、焼きそば、たこ焼き、焼きもろこし——
お祭りの空気に、すっかり気持ちが浮き立っていた。

「凛花、金魚すくいやってみる?」
「うんっ、やる!」

結果は一匹も取れなかったけれど、透くんがさりげなく取ってくれた金魚を一匹、袋に入れてくれた。

「ありがとう……なんか、わたし、今日ずっと助けられてる」

「それでいいじゃん。今日はそういう日」