水色に混ざる夏

土曜日、お母さんに着せてもらった浴衣姿を、鏡の前でじっと見つめて、ちょっとソワソワ。
(……本気に見えすぎちゃうかな。透くん、どう思うかな)

でも、ふうっと息を吐いて、なんか笑ってしまった。
「ま、いっか。可愛ければ、なんでもいいよね!」

気持ちを決めて玄関へ向かったわたしを、お母さんが少し不思議そうに呼び止める。

「ちょっと、凛花? 浴衣を着付けたのは良いけど、そんな格好で、どこへ行くの?」

サンダルを履きながら、わたしは焦って答える。

「えっ? えっと、友だちとちょっと……」

「その浴衣、夏祭りに行くみたいに見えるけど、 近所ではやってないわよ?」

「う、うん、でも今日は特別っていうか……」

お母さんはちょっと呆れた顔をしながらも、ふっと懐かしそうに笑った。

「昔はね、この辺りでも夏祭り、すごく賑やかだったのよ。夜になると浴衣の子がいっぱいで。……今は静かになっちゃったけど」

「へえ……そっか」

なんとなく気まずくて早足で家を出たけど、玄関のドアが閉まる瞬間に見えたお母さんの笑顔が、なんだかすごく楽しそうで。

――お母さんも好きだった夏祭りに、わたしも行けるんだ!

そんな風に思ったら、夏祭りに行くのが、よけいに楽しみになった。