ちょっとした違和感はすぐに忘れて——

ふたりで並んで食べる、ささやかなピクニック。風がそよいで、木漏れ日がキラキラと輝いてる。

「そういえば、透くんはなんでこの場所を最初に選んだの?」

おにぎりを食べ終わったころ、ふと疑問が浮かんだ。

「この場所は、小学5年の夏休みに見つけたんだ。誰にも邪魔されない場所で、ひとりになれるから、よく来るようになった」
「……初めてタイムリープしたのが、ここを見つけた日の帰り。あの中庭で日向夏シロップのかき氷を食べた時だった。」

その言葉に胸がきゅっとなった。
わたしの知らない、子供の頃の透くんを知れたからかな?

それとも、誰にも邪魔されない場所が気に入った理由が気になるから?
ひとりの時間が好きなのかな? それとも……。

「だから、初めてタイムリープする前に寄った場所に行けば、手がかりが見つかるんじゃないかと思ったんだ」

その言葉を聞いて、わたしは自分がただ透くんと一緒に居たかっただけで、あまり考えずに、ついてきただけだったと気づく。
何かを見つけたいという明確な目的があった透くんに比べて、わたしの動機はずっと曖昧だった。

「……そっか。透くんはちゃんと考えてたんだね。わたし、ただ……なんとなく一緒に来ちゃってた」

……少しだけ胸がチクッとした。
だってわたし、てっきり透くんも同じ気持ちで来てくれたのかと思ってたから。
一緒にいたいって思ってくれてたんじゃないかって——勝手に。

「俺が誘ったんだ、どうやって謎を解き明かすかは俺が考える」
「でも、他にヒントが得られそうな方法も思い当たらない」

「それで……この力って、夏と関係してる気がするだろ?」

「うん、夏休みに、かき氷だよね」

「そう、だから、夏らしいことを一緒にしたら、何かヒントが見つかるんじゃないかって考えたんだ」

「……そっか。それって、つまり」

「《《いろんな夏》》を過ごせば、何かが見つかるかもしれないって作戦」

その言葉を聞いて、わたしの胸の奥にあったチクリとした気持ちは、ふわっと溶けていった。