季節は巡り、時折吹く涼しげな風に淡い黄色や寂しげな茶色の葉が舞っていた。

もう後二ヶ月もすれば雪が降るかな…そんな事を考えていた。

相変わらず僕と"アイツ"
つまり原角は仲が良かった。
最初の頃は僕が一人でいる時にしか声を掛けてこなかったけれど、最近は所構わず話掛けて来ていた。

原角は何故か僕以外の人とは話さなかったし、僕自身も他の人とはあまり喋らなかった。

皆が勉強漬けになっているのを見て気後れしてた、と言うのもあるけれど…

でも原角は不思議と勉強もスポーツも出来た。
僕の知らない難しい事を知っているし、体育で走れば必ず僕の前にいた。



しかし、二人の関係はある日一変した。

その日、僕と原角は校内にある中庭で話していた。

すると突然

『建ちゃん…』

彩が声を掛けてきた…何だか難しい顔をしている…



『ねぇ…さっきから、誰と…話してるの?』

「え?原角君だよ、同じクラスの」

『…あのね、私の友達が建ちゃんのクラスにいるの』

「うん…?それで?」
『その子がね、最近建君がいつも一人で喋ってるって』

「え?ぼ、僕が?」

『私…気になって、さっきから隠れて見てたの…建ちゃんが一人二役で話してるの…どうし…て?』

その言葉を聞いた瞬間、僕の意識は弾け飛んだ。


闇の中で僕は彩の言葉をたどった…

(だから僕達は似てたのか…でも)

じゃあ僕が見てた原角君は…誰?だれ…ダレ?




次に僕が目を醒ましたのは病院のベッドの上だった。

周りには両親と彩がいる…


その後聞いた話は最悪だった。


解離性障害
多重人格

僕はそれに限りなく近づいていると言うのだ…

医師は、両親の期待が大きすぎたのと僕自身、我慢しすぎが原因だと言った。

それが転じて僕の心が原角を産み出したらしい…理想の自分を…


危機的状態ほどではない、すぐ回復するだろうと言う医師の言葉で
幸い入院にはならなかった。
けれど退院の時、医師は

『根本的に治療するためには、君が君自身に勝たなくてはいけない』
僕にそう言った…

僕が僕自身に…
つまりは僕が原角に…
勝たなくてはいけない…