黎明の麒麟ー凌暁と雪蘭の伝説ー

蓮音が二人の来訪を待ち構える中、
二人の馬が神域を目前にした峠を越えた時だった。

疾風のように駆ける早馬が、
二人の前に滑り込むように止まった。
乗っていた兵は息を荒くし、
凌暁に深く頭を下げる。

「国主様――ッ! 緊急の報せにございます!」

嫌な予感が走る。
凌暁は兵から巻物を奪い取るように受け取り、
急いで開いた。
そして目を見開く。
「……霜華国に、三国が――同時に攻め込んだ、だと……?」

雪蘭も震える声で問う。
「そ、それは……蓮音と結託していた国々……?」
兵は唇を噛み、頷いた。
「敵は数万。すでに国境付近で激戦が始まっております!
宰相閣下より“至急ご帰還願いたい”とのこと……!」
凌暁は硬い表情で空を仰いだ。
目の前には天啓。
しかし国は滅亡の危機に瀕している。

「……雪蘭。どうすべきだと思う……?」
雪蘭は胸の奥が強く痛んだ。
自分が蓮音に呪詛をかけられなければ、
こんなことには――
自責の念が胸に押し寄せる。
「もし……私たちがここで引き返したら……蓮音は、必ず神殿に籠ってしまいます。今度こそ、二度と彼女を捕らえられません……!けれどすぐに帰らなければ……」

その通りだった。
神殿に籠もられれば、彼女を裁くことは不可能。
呪詛も解けない。
敵国との連携はさらに拡大し、
霜華国は終わるだろう。

しかし――
帰れば国は救えるかもしれない。
目の前には二択が迫る。

二人は迷い、言葉を失った。
その時だった。