その夜、
机に突っ伏して眠り込んだ凌暁の前に
淡い金光が集まった。

“白い鹿”――
麒麟が仮の姿で現れたのだ。
(……凌暁……)
その声は、胸の内に直接響く。

「麒麟か……!聞いてくれ、雪蘭が……なぜ……!」

(雪蘭は“呪”にかけられているのだ。あれに阻まれて、あの娘に直接警告することができない。その呪詛を渡した者は……お前のすぐ側にいる。)

麒麟の言葉に凌暁はすぐさま思考を巡らせる。
「……璃月か……!いや、それとも……蓮音……!」

麒麟の瞳は深い悲しみをたたえていた。
(急げ。雪蘭の命の灯は……薄くなりつつある。このままでは……取り返しがつかぬ。)

凌暁は夢の中で叫んだ。
「どうすれば……!どうすれば雪蘭を救える!!」

麒麟は静かに告げる。
(“呪”の根は――天啓にある。蓮音を追え。雪蘭を救えるのは……お前だけだ。)
そして麒麟は光となって消えた。

凌暁は目を覚ます。
背中は汗で濡れ、息は荒い。
「……雪蘭……必ず……必ず助けるぞ……!」

愛する妻を救うため、
凌暁の戦いが始まろうとしていた。