蓮音は微動だにせず、静かに告げた。
「麒麟の加護は、相応しい者が得るべきもの。あの姫君は……光に値しないだけ。」
その瞳に宿るのは、聖女の慈愛ではなく――
執念と、歪んだ信仰だった。
「準備を怠らぬよう。
時が来れば……わたくしから知らせますわ。」
密使は深く頷き、
闇に溶けるように消えていった。

残された蓮音は、
薄闇の中でそっと呟く。
「さあ……あなたの光はどこまで耐えられるのかしら、雪蘭様。」
そして、黒衣の影の中で、
蓮音の微笑は完全な“悪の顔”になった。