「雪蘭！！」
凌暁が真っ先に駆け寄ったのは璃月ではなく、
雪蘭だった。
彼は瞬時に雪蘭の腕を掴み、
そのまま強く、強く抱きしめた。

雪蘭の熱の暴走が──
抱き寄せられた胸の鼓動に吸い込まれるように弱まっていく。
「……りょ、凌暁さま……？」
「大丈夫だ。そなたを傷つけるものなど、決して近づけはしない。」
低く、深い声。
胸板に頬が触れ、雪蘭の呼吸が震えて乱れる。
凌暁は雪蘭の頬を両手で包み込んだ。
「誤解するな。そなたがいるのに、誰に触れられるものか。」

そして璃月の方へ一瞬だけ冷ややかな視線を向ける。
「璃月、勝手に私の腕に触れるな。誤解を招く。」
璃月は固まった。
恥ずかしさで真っ赤になり、唇を噛む。

一方、雪蘭の胸の奥。
暴れていた霊力が、しゅうっと鎮まっていく。
凌暁は雪蘭の耳元でそっと囁いた。
「……嫉妬したのか？」
雪蘭は真っ赤になり、首を振る。
「ち、違います……！」
「そんなところもかわいい。」
凌暁は心配するなとでもいうように、
雪蘭の額にキスを落とした。

そんな光景をまざまざと見せつけられた璃月の心は──
嫉妬と屈辱でぐしゃりと音を立てた。