実は儀式後の祝宴の折、
少し離れた薄暗い回廊に
蓮音は静かに数名の国主や使節を呼び寄せていた。

彼らは皆、
霜華国の伸長と凌暁の存在を快く思っていない面々。

蓮音は慎重に、
しかし巧みに話を切り出す。
「麒麟は霜華国に加護を与えた。このままでは、霜華が覇権を握るでしょう。」
「雪蘭殿の存在は、各国の均衡を崩します。彼女が“麒麟の媒介者”なのですから。」


国主の一人が問う。
「……何が言いたい?」
蓮音の瞳に影が差す。
「均衡を保つ術は、彼女を――消すほかありません。」
息を呑む国主たち。
だが、恐怖と利害が、彼らの口を噤ませる。

蓮音はさらに追い打ちをかける。
「もし霜華国が弱体化すれば、失われた均衡は戻る。あなた方の国が再び力を持つでしょう。」
「私は……神殿を守らねばなりません。彼女が来れば、私は居場所を失うのです。」

蓮音の言葉には、
野心ではなく“追い詰められた者の desperation(必死さ)”が滲む。
だからこそ国主たちは、
彼女を利用できると判断する。
こうして雪蘭暗殺の計画は
水面下で動き出していたのだ。