儀式の後、
国主たちはそれぞれに
雪蘭と凌暁に祝意を示しに近づいてくる。

「見事だ、霜華国主。」
「太平を頼むぞ。」
「雪蘭さまの光は美しかった……!」
賞賛と羨望の嵐。
その中に微かな敵意や嫉妬が混ざっていることを、
雪蘭は薄々感じていた。

だが、凌暁は彼女の背にそっと手を添え、
決して離さなかった。
「大丈夫。私がそなたを守る。」
その低い声は、
どんな光よりも心を温めた。

それでも――
雪蘭の背後に、
鋭く、暗い視線が落ちていた。

蓮音は人々の影に紛れながら、
じっと雪蘭を見つめている。
(……見ていなさい、雪蘭。神の加護を得ようとも――
あなたは神官の世界には不要なのよ。)

静かだが、確かに歪んだ殺意。

天啓に春風が吹き抜ける中、
雪蘭に新たな危機がそっと歩み寄りつつあった。