だが――
その優しいひとときの背後では、
別の波紋が確かに広がっていた。
神官たちの列の中。
蓮音は顔を強張らせたまま、
微動だにできずにいた。
自分より若く、
ただ“正妃”としてこの神域に来たばかりの娘
――雪蘭。
彼女は霊鏡の神気を受けても壊れず、
むしろそれを取り込み、神の世界に触れ、
麒麟の加護を受け……
ついには 光脈を動かした。
(――ありえない。私はこの天啓で育ち、神官として十余年、霊力を磨いてきたというのに。)
胸の奥に渦巻くのは祝福などではない。
焦燥。
劣等感。
嫉妬。
恐れ。
そして、
脅威。
(この娘を放置すれば……いずれ神官の役目は彼女が奪うだろう。霊鏡を扱える者は最高位の巫女だけのはず……なのに、どうして……)
蓮音の指先が震えた。
その震えは怒りか、それとも恐怖か。
神官仲間が心配そうに声をかけた。
「蓮音……大丈夫か? 顔色が悪い。」
「……ええ。」
蓮音は微笑んだが、
その唇の色は血の気を失い、
瞳は笑っていなかった。
(これを放っておけば……この天啓どころか、神官の存在そのものが揺らぐ。)
彼女の中で、
ひとつの決意の芽が音を立てて芽吹いた。
――雪蘭を、排除しなければならない。
その優しいひとときの背後では、
別の波紋が確かに広がっていた。
神官たちの列の中。
蓮音は顔を強張らせたまま、
微動だにできずにいた。
自分より若く、
ただ“正妃”としてこの神域に来たばかりの娘
――雪蘭。
彼女は霊鏡の神気を受けても壊れず、
むしろそれを取り込み、神の世界に触れ、
麒麟の加護を受け……
ついには 光脈を動かした。
(――ありえない。私はこの天啓で育ち、神官として十余年、霊力を磨いてきたというのに。)
胸の奥に渦巻くのは祝福などではない。
焦燥。
劣等感。
嫉妬。
恐れ。
そして、
脅威。
(この娘を放置すれば……いずれ神官の役目は彼女が奪うだろう。霊鏡を扱える者は最高位の巫女だけのはず……なのに、どうして……)
蓮音の指先が震えた。
その震えは怒りか、それとも恐怖か。
神官仲間が心配そうに声をかけた。
「蓮音……大丈夫か? 顔色が悪い。」
「……ええ。」
蓮音は微笑んだが、
その唇の色は血の気を失い、
瞳は笑っていなかった。
(これを放っておけば……この天啓どころか、神官の存在そのものが揺らぐ。)
彼女の中で、
ひとつの決意の芽が音を立てて芽吹いた。
――雪蘭を、排除しなければならない。



